山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

MKSAP Questions12: Neurology

41歳の女性
2年前からの右手の振戦のために受診した。
彼女は、特にはさみを使う時、震えが生じて、美容師の仕事の妨げになっていると訴えている。また、前腕の強ばりがある。
患者は、食事、書くこと、パソコンのタイピングを行うことができ、外傷、不安定、動きの遅さ、または歩行速度の変化はない。アルコールは振戦に影響を与えません。振戦の家族歴はない。
身体所見では、バイタルサインは正常である。右上肢の振戦が認められ、リズミカルに手首が屈曲、指の不随意な屈曲、および前腕の回内がある。振戦は安静時と動作時の両方に存在し、伸ばした腕の位置を変えることで改善する。測定障害、拮抗運動反復不全、動作緩慢、硬直、引きずり歩行、または腕の振りの減少は認められない。筆跡は震えたり、小書症はない。頭部MRIは異常がない。次のうちどれが最も可能性の高い診断ですか?
A Cerebellar tremor(小脳性振戦)
B Dystonic tremor(ジストニア振戦)
C Essential tremor(本態性振戦)
D Parkinson disease(パーキンソン病
E Rubral tremor(赤核性振戦)
 
こんな患者さんが来院したら・・・・これは神経疾患と思いますが出会うことは少ないでしょうね。一般的には本態性振戦が圧倒的に多いですね。アルコールで改善していないし、これは違うでしょう。しかも筆跡は問題ないので本態性振戦では違いそうですね。
パーキンソン病も安静時振戦がないし、企図振戦もないから小脳ではなさそうですね・・😨
リズミカルな不随運動と振戦なので・・・答えB
 
 Keypoint‼️
 ジストニア振戦は、ジストニア姿勢があり、安政時や運動時にも認められる振戦
患部の四肢の姿勢を変化させると振戦が消失する。
 
ジストニアは手や体がねじれるような動きで、日常生活に支障をきたす疾患。
ジストニア運動は特定の動作によってより悪化する傾向がある。

MKSAP Questions11: Neurology

39歳の女性

3日前からの不安となり、転倒しめまいを自覚したために救急外来を受診した。

彼女は、多発性硬化症と5年前に診断され、それ以来インターフェロンベータ-1aで治療されている。 また、神経障害性疼痛のためにガバペンチンを服用している。

身体検査では、温度は37.3°C、他のバイタルサインは正常。

左側に核間性眼筋麻痺が見られ、すくみ足、タンデム歩行ができず、ロンベルグ試験中に目を開けてもバランスが保てない。

 

最も適切なすぐにやるべき治療は?

A)高用量ステロイド

B)低用量ステロイド

C)血漿交換

D)ビタミンD

 

これは、多発性硬化症の治療中に神経症状が出現しており再燃ですね😁

再燃時の治療はどれなのかという問題

答えは、A

Keypoint‼️

多発性硬化症の再燃時の治療は、高用量ステロイド

Optic Neuritis Treatment Trialで、高用量ステロイド(1g/d for 5days)、低用量ステロイド(amg/kg/d for 5days)、プラセボで比較検討した試験で、高用量ステロイドが最も有効であった。

 

多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)

中枢神経の髄鞘が破壊されていく慢性炎症性脱髄疾患で時間的・空間的に多発することがポイント 臨床症状では、手足のしびれ、筋力低下、かすみ目などの症状を来す。

治療として、初発時や再発時にはステロイドパルスを、症状が改善しない場合は血液浄化療法も検討する。ステロイドパルス治療終了後は、ステロイド経口投与に切り替え、漸減し中止する。その後、症状が落ち着いた後は、再発予防や進行防止のために、インターフェロンβ、グラチラマーアセテート、フィンゴリモド、ナダリズマブ、フマル酸ジメチルを投与する。

 

 

MKSAP Questions10: Neurology

47歳の女性

過去4日間に3回発生した6〜8時間持続する突然の激しい頭痛があり救急外来を受診した。

痛みは自発的に発生し、10秒以内に最大強度に達し、頭部全体が痛く、ズキズキしている。

彼女は、吐き気と羞明があり、精神、視覚、感覚、または運動機能に異常はない。

最初の2つのエピソードはシャワーを浴びている間に発生し、3番目のエピソードは2時間前の夕食の席で発生した。

患者には不安がありますが、頭痛の既往歴や家族歴はない。

彼女は不安のために1ヶ月前にセルトラリン(SSRI)を服用し始めたが、頭痛の発症後にそれを中止した。

身体検査では、体温は37.8°C、血圧は130/80 mm Hg、脈拍数は72 /分。

神経学的所見などの身体検査所見は正常で、頭部CTと腰椎穿刺の結果も正常であった。

 
最も適切なマネージメントは? 
A Digital subtraction angiography(デジタルサブストラクション血管造影)
B Magnetic resonance angiography of the brain(MRA)
C Methylprednisolone sodium succinate(メチルプレドニゾロン
D Sumatriptan(トリプタン製剤)
E Valproic acid(バルプロ酸®︎)
 
47歳女性の初発の激しい頭痛 CTなどでは異常がないが・・・腰椎穿刺はくも膜下出血の除外をしたかったのかな? しかし、この病歴だけで片頭痛と決めつけるのはないでしょう😨 まずはMRAで評価したいかな
答えは、B
 
Keypoint‼️
可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction:RCVS)の診断には、CTAやMRAが有用である。雷鳴頭痛の2番目に多い原因である。
 

Reversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS)

20-50歳の女性が突然の(数秒から数分の期間で始まる)激しい頭痛を認め、1-3週間持続する。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、攣縮を起こした脳動脈の灌流域に見合う視覚異常や片麻痺、構音障害、失語、失調等の症状を伴う。

この疾患は、1988年Callら により初めて報告された。

明確な診断基準はないものの、くも膜下出血などの除外を行うことが前提である。

そして

1)CTA/MRA等で脳動脈に多焦点性に部分的攣縮が認められる。

2)脳動脈瘤によるくも膜下出血ではない。

3)髄液所見が(ほぼ)正常である。(タンパク<80mg/dl, 細胞数<10mm3,糖正常レベル)

4)急性の強い頭痛

5)発症から3ヶ月以内に血管撮影の異常所見が改善する

1〜5の基準を満たせば診断できると考えられている。

 

特徴的な雷鳴頭痛がある場合が、95%であるが、雷鳴頭痛がないこともある。

 

片頭痛のような嘔吐や視覚過敏などもあり、50%で片頭痛の既往もあるため、片頭痛患者でも疑わしい場合はMRAなどを行う。

 

 

約60%に誘因が指摘できる

血管拡張薬(スマトリプタン、コカイン、抗うつ薬など)

運動、バルサルバ手技、感情、シャワー、入浴など

 

治療

確立された治療方法はない

症状の強い症例に対してはカルシウム拮抗薬が考慮される。

MKSAP Questions9: Neurology

72歳の女性

5時間前に、発語困難と右顔面麻痺のために救急外来を受診した。

特に内服薬はない。

 身体検査では、バイタルサインは正常。 患者は開眼しており、周囲の状況は理解できている。

自発的な発語はゆっくりで、右側の顔面麻痺と構音障害が認められている。

血液検査では、Hb、血小板数、および凝固は正常範囲内で、 心電図は正常。

頭部のCTスキャンは急性左前頭野に虚血性脳梗塞を認めた。

頸動脈超音波検査では、両方の内頸動脈の狭窄が40%未満であった。

経頭蓋ドップラー超音波検査は正常、 経胸壁心エコーではEF50%で、それ以外は異常なし

アスピリンとロスバスタチンが開始され、患者は3日間遠隔で監視できるユニットに入院し

その間、洞調律であった。

 

次のうち、管理における最も適切な次のステップはどれですか?

A Addition of clopidogrel(クロピドグレル®︎を追加する)
B Outpatient cardiac telemetry(外来 心電図テレメトリー
C Substitution of apixaban for aspirin(アピキサバンを皮下注する)
D Transesophageal echocardiography(経食道エコー)
 
72歳女性の急性期脳梗塞
頸動脈エコーは軽度、心エコーでも異常はなく、心電図でも洞調律・・・・
しかし心原性と思われる脳梗塞だしね・・・・
答えは、B
 
Keypoint!
潜在性脳梗塞の評価では、外来患者に長期心電図モニターを行うと30%
で心房細動が発見される
 
 

Cryptogenic Stroke(潜在性脳卒中

明確な定義や診断基準はないが、潜在性脳卒中は虚血性脳卒中の25-40%を占める

・心原性塞栓が否定的 最低24時間〜数週間(出来れば30日間)の心電図モニターで 心房細動などの不整脈が認められない

動脈硬化性病変が乏しい

ラクナ梗塞では説明できない場合に潜在性脳梗塞を疑う。

二次予防については,塞栓原不明の脳塞栓であっても,抗凝固療法が抗血小板療法と比較して優れているという証拠はない。

患者が心房細動を有しているのかを判断するためには、24時間心電図では3%程度であるが、30日間モニターできれば16%程度まで検出率が上昇する。

日本でもApplewatchなどのモニターをすれば今後検出率が増加するかもしれない。

 
 

MKSAP Questions8: Neurology

53歳の女性が、
 
9か月前に診断された行動障害型前頭側頭型認知症のための夫に連れられてクリニックに来た
彼女の症状は、時折みられる失語症、軽度の記憶障害、行動の脱抑制、および強迫性行動であり、診断されて以来悪化し、破壊的になっている。
近所のゴミ箱から集めたペットボトルが入った大きな袋を2週間前に孫娘の誕生日会に持ち込んだ後、息子とその家族から疎遠になっている。 彼女の夫は彼女の症状をコントロールするための薬について尋ねている。
 
推奨できる最も適切な薬剤はどれか 
A Citalopram(シタロプラムSSRI
B Donepezil(ドネペジル®︎)
C Memantine(メマリー®︎)
D Methylphenidate(メチルフェニデート®︎:精神刺激薬)

 

E Olanzapine (ジプレキサ®︎;非定型抗精神病薬
 
 行動障害型前頭側頭型認知症・・・なかなか出会わないような気がするが・・・
前頭側頭型認知症の有病率は、人口10万人あたり2~10人、すべての認知症のおよそ5%を占めると考えられているが・・・・どうしたものか?
まあドネペジルやメマリーは、ほぼ意味ないような薬ですから、それ以外の薬が正解なのでしょう。
正解は、A
 
Keypoint‼️
治療法がなく対症療法のため、困っている症状を治療することが大切である。
今回は強迫性障害などの行動異常に対しての治療としてSSRIを用いる。
 
 
・前頭側頭型認知症
主に前頭葉と側頭葉を中心に神経細胞が障害され、それによって行動や精神、言語などに症状が出てくる認知症
前頭葉:思考、感情、物事の判断などをつかさどっており、人格・理性・社会性に大きく関係側頭葉:言葉、聴覚、記憶とか感情に関与
前頭側頭型認知症では、これらの機能が低下するので、行動や精神、言語などにさまざまな症状が出てくる。
いずれも、アルツハイマー認知症とは違って、65歳以下の比較的若い人がかかる認知障害
 
「行動障害型」と「言語障害型(「意味型」「非流暢性型」「言語減少型」)」の2つに分類
 

(1)行動障害型前頭側頭型認知症
・早期の脱抑制行動:社会的に不適切で、礼儀やマナーが欠如し、衝動的で無分別な行動
 例)万引き、痴漢など反社会的行動。道徳観が低下するので罪悪感を感じない、など。
・早期の関心低下や無気力
 例)家事をしない、質問しても真面目に答えない、ひきこもる、など。
・感情の麻痺
 例)他人への興味がなくなる、共感や感情移入ができない、など。
固執・常同
 例)同じメニューを作る、なくなるまで食べ続ける、時刻表的な生活、など。
・食習慣の変化
 例)同じものばかり食べる、甘いものを過剰に食べる、など。
・遂行機能の障害
 例)行動を計画立ててできない、など。

(2)言語障害型前頭側頭型認知症
a 意味型
物の名前が出てこなくなったり、知っているはずの言葉を理解できない。読めなくなったり書けなくなったりもするが、自分から言葉を話すのは流暢にできる。
b 非流暢性型
流暢に話せなくなります。自ら話すときにも文法が崩れてしまう。
 c 言語減少型

アルツハイマー認知症とは異なり、認知機能の低下はそれほど顕著ではなく、自分が病気であるという自覚はないため、しばしば医療機関の受診が遅れる

 

治療方法はないが、行動障害を改善するためにSSRIの使用が推奨されている。

発症後の生存期間は6~11年。診断がついてからは3~4年くらいの予後の悪い疾患

MKSAP Questions7: Neurology

22歳の男性
初めて全身性強直間代発作を起こしてから40分後に救急外来にやってきた。
彼の母親によると、患者は5分間震えを認めていた。
彼はこれまでに発作を起こしたことはなく、けいれん、凝視、混乱、または記憶喪失のエピソードもありませんでした。
彼は最近は特に病気はなく、神経学的異常もない。誕生と発達は正常で発作やてんかんの家族歴はない彼は薬の服用歴はなく、違法薬物は使用していない。
身体検査では、バイタルサインは正常で、神経学的異常所見はない。
血液検査は異常なく、尿中の薬物スクリーニング検査は陰性である。
 

 次のうちどれが最も適切な最初の治療か?

A Head CT(頭部CT)
B Intravenous levetiracetam(イーケプラ点滴)
C Intravenous lorazepam(セルシン投与)

D Lumbar puncture(髄液穿刺)

 

22歳男性の初発の痙攣発作、痙攣は止まっているが、果たして最初にやるべきことは・・・

いきなり髄液穿刺はないでしょう‼️

答えはA

Keypoint‼️

原因がはっきりしない初発の痙攣では、頭部CT検査をまず行、緊急の治療が必要な原因がないか精査をする。

 

初発の痙攣発作では、脳出血などの緊急に介入が必要な原因がないかCTをまず撮影する。

CTはMRIや脳波と比較して容易に撮影可能である。

イーケプラなどは原因がわかるまでは投与はしない。再発リスクを見積もって投与するか決めるべきであり、この患者は初発の痙攣発作であり、てんかん発作の定義は満たさない。

てんかんの定義:24時間あけて2回の原因不明の痙攣発作または1回の痙攣でも検査結果で再発リスクが高いと判断された場合

 

 2年間の再発リスクは、てんかんの定義を満たした場合の再発リスクは60%程度

 身体所見で異常がなく、てんかんのリスクファクターがない、CTで異常がない場合の2年間の再発リスクは40% MRIと脳波でも異常がなければ20%程度まで低下する。

MKSAP Questions6: Neurology

51歳の女性 弁護士

 1年前から毎日午後に倦怠感を自覚するため、頻繁な昼寝を必要とし、オフィスでの集中力が続かないために受診した。

 睡眠衛生の改善、ヨガなどの定期的な運動、、ビタミン補給などのライフスタイルを改善したが、症状は改善しなかった。

 彼女は5年前から多発性硬化症に罹患しており、薬はグラチラマー酢酸塩注射液(コパキソン皮下注®︎)とビタミンDを内服していた。

 身体検査では、バイタルサインは正常、うつ病のスクリーニングは陰性です。 その他の身体検査は異常なし。 ヘモグロビンと甲状腺刺激ホルモンレベルも問題ない。

 

最も適切なマネージメントは?

51歳の女性は、頻繁な昼寝を必要とし、弁護士として働くオフィスでの集中力を損なう1年間の毎日の午後の倦怠感の病歴について評価されています。 睡眠衛生の改善、定期的な運動、ヨガ、ビタミン補給などのライフスタイルの調整は、この症状を解決していません。 彼女は多発性硬化症の5年の歴史があります。 薬は酢酸グラチラマーとビタミンDサプリメントです。 身体検査では、バイタルサインは正常です。 うつ病のスクリーニングは陰性です。 身体検査の残りの部分は貢献していません。 ヘモグロビンと血清甲状腺刺激ホルモンレベルを含む臨床検査の結果は注目に値しません。 

A Baclofen(リオレサール®︎)
B Memantine(メマリー®︎)
C Modafinil(モディオダール®︎)覚醒を維持するための精神刺激薬
D Substitution of an interferon beta for the glatiramer acetate(コパキソン皮下注)
E Tetrahydrocannabinol-cannabidiol combination(医療用大麻
 
多発性硬化症の女性が、日中の眠気と集中力低下に困っている・・・・・
医療用大麻はないでしょう‼️
メマリーも、認知症で使用しますが、ほとんど意味ないしね・・・
正解は・・・C
 
Keypoint‼️
多発性硬化症関連の倦怠感では、モディオダールが有効である。
 
多発性硬化症では、慢性の倦怠感、睡眠障害うつ病などの症状が生じる。
精神的に疲れたような感じを午後に生じることもある。
睡眠習慣の改善などをやることはもちろんであるが、それでも改善しない場合は、モディオダールが有効である。
 
 中枢神経系の複数箇所に脱髄が生じ「空間的多発性」、また再発性に生じること「時間的多発性」が特徴の中枢神経系脱髄疾患
20-30歳代の女性で特に発症しやすい

 

・視神経の症状:視力の低下、視野の異常、眼痛などの症状

・脊髄の症状:運動症状(手足の麻痺、つっぱり)、感覚症状(手足のしびれ、感覚低下、痛み、帯状の締めつけ感)、膀胱直腸障害(失禁失便してしまう)など

・脳の症状:運動症状、感覚症状に加えて、失調、複視、構音障害、吃逆、嘔気、傾眠(極端な眠気)、精神症状(集中力の低下、疲れやすさ、抑うつ)などの症状

発症様式:急性ないし亜急性のことが多く、自然寛解することもある。

「ウートフ兆候」

夏場や入浴時の体温上昇により症状が一過性に悪化する

「レルミット兆候」

頸の曲げ伸ばしで手足などにしびれが走る