山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

MKSAP Questions15: Neurology

51歳の女性

1ヶ月前からの、新規に発症した異常な動き、妄想、幻覚と、進行する錯乱のためERへ

彼女は症状が現れる前は健康で、薬の服用はない。

身体所見では、バイタルサインは正常、患者は意識があるが、見当識は人と場所のみ理解している。5分後に3つの物を思い出すことができない。

命令や注意力を維持するために常に意識を向けるようにしなければならない、

視覚および聴覚の幻覚が持続しており、断続的にゆっくりと身もだえする動きをしている。

 

筋力、感覚、深部腱反射は正常です。血算と電解質などは異常がない。

頭部MRIと腰椎穿刺の結果は正常で、血清抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体抗体の検査は陽性である。

 

次のうちどれが最も可能性の高い診断ですか?

A Breast adenocarcinoma
B Non–small cell lung cancer
C Ovarian teratoma
D Small cell lung cancer
 
これは抗 NMDA 受容体抗体が陽性なので、診断は簡単ですね。抗 NMDA 受容体脳炎ですね。
私も1回だけ経験がありますが、診断は疑わないと難しいですね。元々健康な若い女性が、急に異常行動が出現しています。統合失調症みたいな感じですが、間べつに常に考える必要がありますね。
答えはC
 
Keypoint‼️
奇形種関連の抗NMDA受容体脳炎では、急な随意運動が生じる舞踏病、精神症状、痙攣、自律神経障害が生じる。
 

・抗NMDA受容体脳炎

抗 N-methyl-D-aspartate receptor(NMDAR)脳炎は,中枢神経細胞の NMDAR に対する自己抗体の産生によって発症する辺縁系脳炎で,若年女性に好発し卵巣奇形腫を合併することが多い

発症初期には、患者さん自身は自分に何が起こっているのかを正確に認識できない状態で、不安・焦燥に駆られて異常行動をすることが多いと考えられている。

一部には急にふさぎこんだり、最初からてんかん様の発作が生じたりすることもある。多くは精神科を受診する。
早期の腫瘍摘除術 と免疫療法が有効であることが報告されている。また血漿交換療法の有用性が報告されているが、回数などは決まったものはない。

 

MKSAP Questions14: Neurology

78歳の男性
最近の記憶が難しくなっているため受診した。患者は、高血圧のためヒドロクロロチアジドで治療されている。
13か月前に妻が亡くなって以来、食欲不振、不眠が起こり、社会活動を行わなくなってしまった。また彼は、お金の管理や料理など、新しくしないといけないことが増えた。彼は先月の公共料金の支払い漏れの通知を受け取り、認知症を発症しているのではないかと心配している。彼の85歳の兄弟は、2年前にアルツハイマー病と診断された。
6か月前のスクリーニング評価で、患者はMMSE28/30(正常、≥24)、Geriatric Depression Scale Short Form score 9(正常、<6)であった。それ以来、彼は2.3 kg体重が減少していた。
バイタルサインや神経学的所見を含めて異常はない。血算や甲状腺刺激ホルモンおよびビタミンB12を含む臨床検査の結果は正常最も適切な次のマネージメントはどれか? 
A Begin an acetylcholinesterase inhibitor(アリセプト®︎を開始)
B Begin treatment for depression(うつ病の治療開始)
C Obtain a brain MRI without contrast(単純頭部MRI検査)
D Obtain neuropsychological testing(神経心理テストをする)
 
78歳男性
奥さんが亡くなり、社会活動などやらなくなった、いわゆる引きこもりのような状態で、うつ病のような状態ですね。記憶障害などありますが、6ヶ月前の検査で異常がなく流石に認知症ではないでしょう。Treatble dementiaなどはなさそうですし、アリセプトもほぼ意味なさそうな薬ですし、これは簡単かもですね。 答えB
 
Keypoint‼️
高齢者のうつ病は認知機能障害として現れることがある。適切にスクリーニングして治療する必要がある。
 
高齢者用うつ尺度短縮版(Geriatric Depression Scale −Short Version-:GDS-S)

1982年にBrinkらにより開発された高齢者用うつ尺度

本尺度には身体症状に関する項目を含んでおらず, 純粋なうつ気分を正確に測定できること,また回答の選 択肢には「はい」「いいえ」を用いていることから,高齢者にとっては答えやすく,時間もかからないことが優れた特徴

完全版は30項目から構成されているが,1986 年に Sheikh らによって 15 項目の 短縮版が開発され,国際的にも広く用いられている.

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MKSAP Questions13: Neurology

21歳の男性

ERに到着する30分前に始まった持続性のてんかん重積のために搬送された。

気道が確保され、ブドウ糖チアミンの静脈内投与、およびロラゼパムの静脈内投与が2回行われた。ロラゼパムの2回目の投与を受けた後、さらに5分間痙攣が持続した。

患者の薬剤歴はレベチラセタムとアセトアミノフェン  アレルギー:フェニトイン

身体所見:体温は正常、血圧は155/89 mm Hg、脈拍数は108 /分、呼吸数は16 /分、酸素飽和度は97%(鼻カニューレ6 L)

瞳孔の対光反射はあるが、昏睡状態のままであった。 尿中薬物スクリーニングの結果は陰性。

 

次に行うマネージメントで最も適切なものはどれですか?

A Brain MRI (頭部MRI
B Electroencephalography(脳波)
C Fosphenytoin(ホストイン®︎)
D Lacosamide(ビムパット®︎)
E Valproic acid(バルプロ酸デパケン®︎)
 
イーケプラ内服中の21歳男性のてんかん重責発作ですね・・・😱ERでは時々搬送されてきますね。すでにロラゼパム2回投与しても痙攣が持続していたので、なかなか本気モードの痙攣です。アレルギーにフェニトインがあるので困ったものですが・・・答えは、E
 
Keypoint‼️
てんかん重責発作のある患者さんで、フェニトインにアレルギーがある患者の2 lineの薬剤は、バルプロ酸である。
 
てんかん重責発作は、5分間以上持続する間代性痙攣のことであり、臨床的に診断する。
まずは気道確保し、呼吸や循環動態のモニターをしながら、ドルミカムセルシンなどの薬剤投与+ブドウ糖ビタミンB1投与を速やかに行うことが重要であり、次にフェニトインを使用するが、アレルギーなどあれば、バルプロ酸を投与する。
ピムバットは、抗痙攣薬で時々考慮されるが、ガイドラインで推奨される程のエビデンスがまだない。

MKSAP Questions12: Neurology

41歳の女性
2年前からの右手の振戦のために受診した。
彼女は、特にはさみを使う時、震えが生じて、美容師の仕事の妨げになっていると訴えている。また、前腕の強ばりがある。
患者は、食事、書くこと、パソコンのタイピングを行うことができ、外傷、不安定、動きの遅さ、または歩行速度の変化はない。アルコールは振戦に影響を与えません。振戦の家族歴はない。
身体所見では、バイタルサインは正常である。右上肢の振戦が認められ、リズミカルに手首が屈曲、指の不随意な屈曲、および前腕の回内がある。振戦は安静時と動作時の両方に存在し、伸ばした腕の位置を変えることで改善する。測定障害、拮抗運動反復不全、動作緩慢、硬直、引きずり歩行、または腕の振りの減少は認められない。筆跡は震えたり、小書症はない。頭部MRIは異常がない。次のうちどれが最も可能性の高い診断ですか?
A Cerebellar tremor(小脳性振戦)
B Dystonic tremor(ジストニア振戦)
C Essential tremor(本態性振戦)
D Parkinson disease(パーキンソン病
E Rubral tremor(赤核性振戦)
 
こんな患者さんが来院したら・・・・これは神経疾患と思いますが出会うことは少ないでしょうね。一般的には本態性振戦が圧倒的に多いですね。アルコールで改善していないし、これは違うでしょう。しかも筆跡は問題ないので本態性振戦では違いそうですね。
パーキンソン病も安静時振戦がないし、企図振戦もないから小脳ではなさそうですね・・😨
リズミカルな不随運動と振戦なので・・・答えB
 
 Keypoint‼️
 ジストニア振戦は、ジストニア姿勢があり、安政時や運動時にも認められる振戦
患部の四肢の姿勢を変化させると振戦が消失する。
 
ジストニアは手や体がねじれるような動きで、日常生活に支障をきたす疾患。
ジストニア運動は特定の動作によってより悪化する傾向がある。

MKSAP Questions11: Neurology

39歳の女性

3日前からの不安となり、転倒しめまいを自覚したために救急外来を受診した。

彼女は、多発性硬化症と5年前に診断され、それ以来インターフェロンベータ-1aで治療されている。 また、神経障害性疼痛のためにガバペンチンを服用している。

身体検査では、温度は37.3°C、他のバイタルサインは正常。

左側に核間性眼筋麻痺が見られ、すくみ足、タンデム歩行ができず、ロンベルグ試験中に目を開けてもバランスが保てない。

 

最も適切なすぐにやるべき治療は?

A)高用量ステロイド

B)低用量ステロイド

C)血漿交換

D)ビタミンD

 

これは、多発性硬化症の治療中に神経症状が出現しており再燃ですね😁

再燃時の治療はどれなのかという問題

答えは、A

Keypoint‼️

多発性硬化症の再燃時の治療は、高用量ステロイド

Optic Neuritis Treatment Trialで、高用量ステロイド(1g/d for 5days)、低用量ステロイド(amg/kg/d for 5days)、プラセボで比較検討した試験で、高用量ステロイドが最も有効であった。

 

多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)

中枢神経の髄鞘が破壊されていく慢性炎症性脱髄疾患で時間的・空間的に多発することがポイント 臨床症状では、手足のしびれ、筋力低下、かすみ目などの症状を来す。

治療として、初発時や再発時にはステロイドパルスを、症状が改善しない場合は血液浄化療法も検討する。ステロイドパルス治療終了後は、ステロイド経口投与に切り替え、漸減し中止する。その後、症状が落ち着いた後は、再発予防や進行防止のために、インターフェロンβ、グラチラマーアセテート、フィンゴリモド、ナダリズマブ、フマル酸ジメチルを投与する。

 

 

MKSAP Questions10: Neurology

47歳の女性

過去4日間に3回発生した6〜8時間持続する突然の激しい頭痛があり救急外来を受診した。

痛みは自発的に発生し、10秒以内に最大強度に達し、頭部全体が痛く、ズキズキしている。

彼女は、吐き気と羞明があり、精神、視覚、感覚、または運動機能に異常はない。

最初の2つのエピソードはシャワーを浴びている間に発生し、3番目のエピソードは2時間前の夕食の席で発生した。

患者には不安がありますが、頭痛の既往歴や家族歴はない。

彼女は不安のために1ヶ月前にセルトラリン(SSRI)を服用し始めたが、頭痛の発症後にそれを中止した。

身体検査では、体温は37.8°C、血圧は130/80 mm Hg、脈拍数は72 /分。

神経学的所見などの身体検査所見は正常で、頭部CTと腰椎穿刺の結果も正常であった。

 
最も適切なマネージメントは? 
A Digital subtraction angiography(デジタルサブストラクション血管造影)
B Magnetic resonance angiography of the brain(MRA)
C Methylprednisolone sodium succinate(メチルプレドニゾロン
D Sumatriptan(トリプタン製剤)
E Valproic acid(バルプロ酸®︎)
 
47歳女性の初発の激しい頭痛 CTなどでは異常がないが・・・腰椎穿刺はくも膜下出血の除外をしたかったのかな? しかし、この病歴だけで片頭痛と決めつけるのはないでしょう😨 まずはMRAで評価したいかな
答えは、B
 
Keypoint‼️
可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction:RCVS)の診断には、CTAやMRAが有用である。雷鳴頭痛の2番目に多い原因である。
 

Reversible cerebral vasoconstriction syndrome(RCVS)

20-50歳の女性が突然の(数秒から数分の期間で始まる)激しい頭痛を認め、1-3週間持続する。吐き気や嘔吐を伴うこともあり、攣縮を起こした脳動脈の灌流域に見合う視覚異常や片麻痺、構音障害、失語、失調等の症状を伴う。

この疾患は、1988年Callら により初めて報告された。

明確な診断基準はないものの、くも膜下出血などの除外を行うことが前提である。

そして

1)CTA/MRA等で脳動脈に多焦点性に部分的攣縮が認められる。

2)脳動脈瘤によるくも膜下出血ではない。

3)髄液所見が(ほぼ)正常である。(タンパク<80mg/dl, 細胞数<10mm3,糖正常レベル)

4)急性の強い頭痛

5)発症から3ヶ月以内に血管撮影の異常所見が改善する

1〜5の基準を満たせば診断できると考えられている。

 

特徴的な雷鳴頭痛がある場合が、95%であるが、雷鳴頭痛がないこともある。

 

片頭痛のような嘔吐や視覚過敏などもあり、50%で片頭痛の既往もあるため、片頭痛患者でも疑わしい場合はMRAなどを行う。

 

 

約60%に誘因が指摘できる

血管拡張薬(スマトリプタン、コカイン、抗うつ薬など)

運動、バルサルバ手技、感情、シャワー、入浴など

 

治療

確立された治療方法はない

症状の強い症例に対してはカルシウム拮抗薬が考慮される。

MKSAP Questions9: Neurology

72歳の女性

5時間前に、発語困難と右顔面麻痺のために救急外来を受診した。

特に内服薬はない。

 身体検査では、バイタルサインは正常。 患者は開眼しており、周囲の状況は理解できている。

自発的な発語はゆっくりで、右側の顔面麻痺と構音障害が認められている。

血液検査では、Hb、血小板数、および凝固は正常範囲内で、 心電図は正常。

頭部のCTスキャンは急性左前頭野に虚血性脳梗塞を認めた。

頸動脈超音波検査では、両方の内頸動脈の狭窄が40%未満であった。

経頭蓋ドップラー超音波検査は正常、 経胸壁心エコーではEF50%で、それ以外は異常なし

アスピリンとロスバスタチンが開始され、患者は3日間遠隔で監視できるユニットに入院し

その間、洞調律であった。

 

次のうち、管理における最も適切な次のステップはどれですか?

A Addition of clopidogrel(クロピドグレル®︎を追加する)
B Outpatient cardiac telemetry(外来 心電図テレメトリー
C Substitution of apixaban for aspirin(アピキサバンを皮下注する)
D Transesophageal echocardiography(経食道エコー)
 
72歳女性の急性期脳梗塞
頸動脈エコーは軽度、心エコーでも異常はなく、心電図でも洞調律・・・・
しかし心原性と思われる脳梗塞だしね・・・・
答えは、B
 
Keypoint!
潜在性脳梗塞の評価では、外来患者に長期心電図モニターを行うと30%
で心房細動が発見される
 
 

Cryptogenic Stroke(潜在性脳卒中

明確な定義や診断基準はないが、潜在性脳卒中は虚血性脳卒中の25-40%を占める

・心原性塞栓が否定的 最低24時間〜数週間(出来れば30日間)の心電図モニターで 心房細動などの不整脈が認められない

動脈硬化性病変が乏しい

ラクナ梗塞では説明できない場合に潜在性脳梗塞を疑う。

二次予防については,塞栓原不明の脳塞栓であっても,抗凝固療法が抗血小板療法と比較して優れているという証拠はない。

患者が心房細動を有しているのかを判断するためには、24時間心電図では3%程度であるが、30日間モニターできれば16%程度まで検出率が上昇する。

日本でもApplewatchなどのモニターをすれば今後検出率が増加するかもしれない。