山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

MKSAP Questions17: Neurology

29歳の女性
妊娠を試みる前に病院を受診した。若年ミオクロニンてんかんを11年前に診断され、その時点からバルプロ酸の内服始めた。それ以来10.5年間は症状がない。経口避妊薬を内服している。彼女は妊娠した場合に薬を服用することを心配している。 身体所見と最新の脳波は正常である。 経口避妊薬を中止し、葉酸を開始し、次にバルプロ酸を漸減する計画が立てられている。 次のうちどれが最も適切な追加の治療か?

A Gabapentin(ガバペン®)

B Levetiracetam(イーケプラ®)
C Oxcarbazepine(カルバマゼピン®)
D Topiramate(トピラメート®)
E No additional treatment is necessary(追加治療はしない)
 
 
29歳女性てんかんの既往ありバルプロ酸内服中
妊娠をするときのてんかん患者のマネージメントについての問題
バルプロ酸を中止するため、何か治療が必要かもしれない。
答えは、B
 
Keypoint!!
てんかん患者の妊娠可能女性の場合、催奇形性が比較的少ないとされる、イーケプラ®やラミクタール®が推奨される。

MKSAP Questions16: Neurology

 

24歳の女性

4年前から毎月起こる頭痛を認めていた。

頭痛の性状は両方の側頭部痛で、ズキズキし、体を曲げたり、階段を上ったりすることで悪化した。頭痛が起きる時の多くは、重度の吐き気を伴っている。

彼女には、前兆、羞明または音過敏、および視覚的または神経学的症状はない。過去1年間、頭痛の性状は変化していないが、月に4日から10日に増加し、徐々に頻度が増加している。頭痛は8時間続き、通常イブプロフェン内服後1時間以内に効果を認める。

彼女は他の薬を服用していない。

バイタルサインおよびを含み異常はない。

 

次のうちどれが最も適切な治療法は?

A Citalopram(シタロプラム)

B Gabapentin(ガバペンチン)
C Metoprolol(メトプロロール)
D Onabotulinum toxin A(ボツリヌス毒素)
E Rizatriptan(リザトリプタン)
 
24歳女性の頭痛 1次性頭痛でしょう。頭痛の頻度も増加しており、イブプロフェンのみではコントロールが難しくなっていますね・・・・
片頭痛の治療の問題でしょう。答えは、C
 
Keypoint!!
メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、トピラマート、バルプロ酸は、周期的に生じる片頭痛の予防効果がエビデンスレベルA 
1ヶ月に少なくとも5日間の頻度で起きる片頭痛に対しては投与考慮する。
 
片頭痛の急性期治療では、トリプタンやNSAIDsが有効
NSAIDsは軽~中等度の片頭痛発作に対する治療効果が高く、発作のできるだけ早期に服用する。この患者ではイブプロフェンで効果があることからトリプタンの使用は必要ないと思われる。
 
予防治療の適応
①月に2回以上の片頭痛発作がある
②トリプタンやNSAIDsのみでは日常生活に支障がある
③トリプタンやNSAODsにアレルギーがある
④永続的な神経障害を来す恐れのある特殊な片頭痛
上記の場合は、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、トピラマート、バルプロ酸などを使用する。

MKSAP Questions15: Neurology

51歳の女性

1ヶ月前からの、新規に発症した異常な動き、妄想、幻覚と、進行する錯乱のためERへ

彼女は症状が現れる前は健康で、薬の服用はない。

身体所見では、バイタルサインは正常、患者は意識があるが、見当識は人と場所のみ理解している。5分後に3つの物を思い出すことができない。

命令や注意力を維持するために常に意識を向けるようにしなければならない、

視覚および聴覚の幻覚が持続しており、断続的にゆっくりと身もだえする動きをしている。

 

筋力、感覚、深部腱反射は正常です。血算と電解質などは異常がない。

頭部MRIと腰椎穿刺の結果は正常で、血清抗N-メチル-D-アスパラギン酸受容体抗体の検査は陽性である。

 

次のうちどれが最も可能性の高い診断ですか?

A Breast adenocarcinoma
B Non–small cell lung cancer
C Ovarian teratoma
D Small cell lung cancer
 
これは抗 NMDA 受容体抗体が陽性なので、診断は簡単ですね。抗 NMDA 受容体脳炎ですね。
私も1回だけ経験がありますが、診断は疑わないと難しいですね。元々健康な若い女性が、急に異常行動が出現しています。統合失調症みたいな感じですが、間べつに常に考える必要がありますね。
答えはC
 
Keypoint‼️
奇形種関連の抗NMDA受容体脳炎では、急な随意運動が生じる舞踏病、精神症状、痙攣、自律神経障害が生じる。
 

・抗NMDA受容体脳炎

抗 N-methyl-D-aspartate receptor(NMDAR)脳炎は,中枢神経細胞の NMDAR に対する自己抗体の産生によって発症する辺縁系脳炎で,若年女性に好発し卵巣奇形腫を合併することが多い

発症初期には、患者さん自身は自分に何が起こっているのかを正確に認識できない状態で、不安・焦燥に駆られて異常行動をすることが多いと考えられている。

一部には急にふさぎこんだり、最初からてんかん様の発作が生じたりすることもある。多くは精神科を受診する。
早期の腫瘍摘除術 と免疫療法が有効であることが報告されている。また血漿交換療法の有用性が報告されているが、回数などは決まったものはない。

 

MKSAP Questions14: Neurology

78歳の男性
最近の記憶が難しくなっているため受診した。患者は、高血圧のためヒドロクロロチアジドで治療されている。
13か月前に妻が亡くなって以来、食欲不振、不眠が起こり、社会活動を行わなくなってしまった。また彼は、お金の管理や料理など、新しくしないといけないことが増えた。彼は先月の公共料金の支払い漏れの通知を受け取り、認知症を発症しているのではないかと心配している。彼の85歳の兄弟は、2年前にアルツハイマー病と診断された。
6か月前のスクリーニング評価で、患者はMMSE28/30(正常、≥24)、Geriatric Depression Scale Short Form score 9(正常、<6)であった。それ以来、彼は2.3 kg体重が減少していた。
バイタルサインや神経学的所見を含めて異常はない。血算や甲状腺刺激ホルモンおよびビタミンB12を含む臨床検査の結果は正常最も適切な次のマネージメントはどれか? 
A Begin an acetylcholinesterase inhibitor(アリセプト®︎を開始)
B Begin treatment for depression(うつ病の治療開始)
C Obtain a brain MRI without contrast(単純頭部MRI検査)
D Obtain neuropsychological testing(神経心理テストをする)
 
78歳男性
奥さんが亡くなり、社会活動などやらなくなった、いわゆる引きこもりのような状態で、うつ病のような状態ですね。記憶障害などありますが、6ヶ月前の検査で異常がなく流石に認知症ではないでしょう。Treatble dementiaなどはなさそうですし、アリセプトもほぼ意味なさそうな薬ですし、これは簡単かもですね。 答えB
 
Keypoint‼️
高齢者のうつ病は認知機能障害として現れることがある。適切にスクリーニングして治療する必要がある。
 
高齢者用うつ尺度短縮版(Geriatric Depression Scale −Short Version-:GDS-S)

1982年にBrinkらにより開発された高齢者用うつ尺度

本尺度には身体症状に関する項目を含んでおらず, 純粋なうつ気分を正確に測定できること,また回答の選 択肢には「はい」「いいえ」を用いていることから,高齢者にとっては答えやすく,時間もかからないことが優れた特徴

完全版は30項目から構成されているが,1986 年に Sheikh らによって 15 項目の 短縮版が開発され,国際的にも広く用いられている.

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MKSAP Questions13: Neurology

21歳の男性

ERに到着する30分前に始まった持続性のてんかん重積のために搬送された。

気道が確保され、ブドウ糖チアミンの静脈内投与、およびロラゼパムの静脈内投与が2回行われた。ロラゼパムの2回目の投与を受けた後、さらに5分間痙攣が持続した。

患者の薬剤歴はレベチラセタムとアセトアミノフェン  アレルギー:フェニトイン

身体所見:体温は正常、血圧は155/89 mm Hg、脈拍数は108 /分、呼吸数は16 /分、酸素飽和度は97%(鼻カニューレ6 L)

瞳孔の対光反射はあるが、昏睡状態のままであった。 尿中薬物スクリーニングの結果は陰性。

 

次に行うマネージメントで最も適切なものはどれですか?

A Brain MRI (頭部MRI
B Electroencephalography(脳波)
C Fosphenytoin(ホストイン®︎)
D Lacosamide(ビムパット®︎)
E Valproic acid(バルプロ酸デパケン®︎)
 
イーケプラ内服中の21歳男性のてんかん重責発作ですね・・・😱ERでは時々搬送されてきますね。すでにロラゼパム2回投与しても痙攣が持続していたので、なかなか本気モードの痙攣です。アレルギーにフェニトインがあるので困ったものですが・・・答えは、E
 
Keypoint‼️
てんかん重責発作のある患者さんで、フェニトインにアレルギーがある患者の2 lineの薬剤は、バルプロ酸である。
 
てんかん重責発作は、5分間以上持続する間代性痙攣のことであり、臨床的に診断する。
まずは気道確保し、呼吸や循環動態のモニターをしながら、ドルミカムセルシンなどの薬剤投与+ブドウ糖ビタミンB1投与を速やかに行うことが重要であり、次にフェニトインを使用するが、アレルギーなどあれば、バルプロ酸を投与する。
ピムバットは、抗痙攣薬で時々考慮されるが、ガイドラインで推奨される程のエビデンスがまだない。

MKSAP Questions12: Neurology

41歳の女性
2年前からの右手の振戦のために受診した。
彼女は、特にはさみを使う時、震えが生じて、美容師の仕事の妨げになっていると訴えている。また、前腕の強ばりがある。
患者は、食事、書くこと、パソコンのタイピングを行うことができ、外傷、不安定、動きの遅さ、または歩行速度の変化はない。アルコールは振戦に影響を与えません。振戦の家族歴はない。
身体所見では、バイタルサインは正常である。右上肢の振戦が認められ、リズミカルに手首が屈曲、指の不随意な屈曲、および前腕の回内がある。振戦は安静時と動作時の両方に存在し、伸ばした腕の位置を変えることで改善する。測定障害、拮抗運動反復不全、動作緩慢、硬直、引きずり歩行、または腕の振りの減少は認められない。筆跡は震えたり、小書症はない。頭部MRIは異常がない。次のうちどれが最も可能性の高い診断ですか?
A Cerebellar tremor(小脳性振戦)
B Dystonic tremor(ジストニア振戦)
C Essential tremor(本態性振戦)
D Parkinson disease(パーキンソン病
E Rubral tremor(赤核性振戦)
 
こんな患者さんが来院したら・・・・これは神経疾患と思いますが出会うことは少ないでしょうね。一般的には本態性振戦が圧倒的に多いですね。アルコールで改善していないし、これは違うでしょう。しかも筆跡は問題ないので本態性振戦では違いそうですね。
パーキンソン病も安静時振戦がないし、企図振戦もないから小脳ではなさそうですね・・😨
リズミカルな不随運動と振戦なので・・・答えB
 
 Keypoint‼️
 ジストニア振戦は、ジストニア姿勢があり、安政時や運動時にも認められる振戦
患部の四肢の姿勢を変化させると振戦が消失する。
 
ジストニアは手や体がねじれるような動きで、日常生活に支障をきたす疾患。
ジストニア運動は特定の動作によってより悪化する傾向がある。

MKSAP Questions11: Neurology

39歳の女性

3日前からの不安となり、転倒しめまいを自覚したために救急外来を受診した。

彼女は、多発性硬化症と5年前に診断され、それ以来インターフェロンベータ-1aで治療されている。 また、神経障害性疼痛のためにガバペンチンを服用している。

身体検査では、温度は37.3°C、他のバイタルサインは正常。

左側に核間性眼筋麻痺が見られ、すくみ足、タンデム歩行ができず、ロンベルグ試験中に目を開けてもバランスが保てない。

 

最も適切なすぐにやるべき治療は?

A)高用量ステロイド

B)低用量ステロイド

C)血漿交換

D)ビタミンD

 

これは、多発性硬化症の治療中に神経症状が出現しており再燃ですね😁

再燃時の治療はどれなのかという問題

答えは、A

Keypoint‼️

多発性硬化症の再燃時の治療は、高用量ステロイド

Optic Neuritis Treatment Trialで、高用量ステロイド(1g/d for 5days)、低用量ステロイド(amg/kg/d for 5days)、プラセボで比較検討した試験で、高用量ステロイドが最も有効であった。

 

多発性硬化症(multiple sclerosis、MS)

中枢神経の髄鞘が破壊されていく慢性炎症性脱髄疾患で時間的・空間的に多発することがポイント 臨床症状では、手足のしびれ、筋力低下、かすみ目などの症状を来す。

治療として、初発時や再発時にはステロイドパルスを、症状が改善しない場合は血液浄化療法も検討する。ステロイドパルス治療終了後は、ステロイド経口投与に切り替え、漸減し中止する。その後、症状が落ち着いた後は、再発予防や進行防止のために、インターフェロンβ、グラチラマーアセテート、フィンゴリモド、ナダリズマブ、フマル酸ジメチルを投与する。