冠動脈に病変がある場合(心臓の血管が細いといわれた場合)
治療法として
1 薬物療法
2 経皮的冠動脈形成術( PCI )
治療方針として、どれが一番いいのか悩む場合がある。
日本では、盛んにカテーテルインターベンション( PCI )が行われているが
どのような状況で、治療法を選択するべきなのであろう
1 急性冠症候群(心筋梗塞など)
このような場合には、大部分の症例で PCI が選択される。
2 安定狭心症
この場合には、薬物療法、PCI、冠動脈バイパス術( CABG )の三つの治療法がある。日本では PCI が行われることが多いが、本当にすべて PCI をすべきなのであろうか。
COURAGE試験
安定狭心症の患者さんを対象に、 PCI と薬物療法を比較した試験である。
結果は死亡、急性冠症候群の発生に群とも差がなかった。
ORBITA試験
70%以上の重度一枝狭窄が認められる安定狭心症で、虚血症状のある患者を対象に試験を行った。
まず全患者に対し、6週間の至適薬物治療を行った。その後、心肺運動負荷試験、症状に関する質問票による評価、ドブタミン負荷心エコー法を実施し、無作為に被験者200例を2群に分け、一方にはPCIを、もう一方にはプラセボ手術を行った。
術後6週間後に、無作為化前に行った方法で再度評価を行った。主要エンドポイントは、運動時間増加量の群間差で、PCIを実施しても、運動時間の改善は認められないとの結果であった。
この試験の結果から、安定狭心症の場合は、 PCI ではなく、薬物療法で治療が十分可能な患者さんもいることがわかる。
では PCI をすべき患者はどんな人なのであろうか。
重要なのは、心筋虚血の評価である。
負荷心筋シンチグラムにおいて左室の心筋量の10%以上に心筋虚血のある患者さん。
PCI を行うことにより5%以上心筋虚血が改善するような患者さんでは PCI が推奨される。
冠動脈造影で有意狭窄病変に対して、心筋血流予備両比( FFR )を測定する。
FFR とは圧センサーつきのガイドワイヤーを冠動脈の狭窄部位より遠位部に入れる。
そしてアデノシン等の血管拡張薬を入れて最大充血を得て測定した狭窄部より遠位部の
圧と近位部の圧の比が FFR である。
それが0 .8起きる場合に心筋虚血と判断される。
FAME2試験
冠動脈造影での有意狭窄病変に対して、 FFR を測定した試験である。
FFR で心筋虚血のなかった病変は、レジストリ群としそのまま経過観察とした。
心筋虚血のあった病変では PCI と薬物療法が無作為化された。
一方、薬物療法群は PCI 群より緊急血行再建が多いという結果であった。
つまり冠動脈が狭窄している病変でも FFR を測定して問題なければ
2018年に診療報酬の改定があった。
PCI の適応をより厳しくする改定であった。
PCI の適応
1 有意狭窄があり、かつ狭心症症状がある
2 90%以上の高度狭窄がある病変
3 心筋虚血が証明された病変
冠動脈造影で有意狭窄があっても、90%未満で狭心症症状が生じない病変では PCI は適応とならない。
心筋虚血が評価されて、 FFR が0.85きらない場合には PCI の適応とはならない。