内視鏡技師勉強会 in 山内診療所 「内視鏡検査・治療で予想される事故対策」の勉強会です。
内視鏡には、胃カメラ、大腸カメラだけでなく、小腸内視鏡、胆膵内視鏡、カプセル内視鏡技師など様々である。
各種検査を行った際に偶発症が発生することがあり、内視鏡技師になる方は発生状況を把握する必要がある。
日本消化器内視鏡学会が1983年から5年ごとに全国調査を行っている。今回は上記資料を参考に勉強する。
2008 年(平成 20 年)より 2012 年(平成 24 年)の 5 年間における消化器関連の偶発症数は,総検査数 17,087,111 件に対して 12,548 件(0.073%)であった.観察のみの偶発症の発生率の 0.014%に対し,治療内視鏡検査での偶発症発生率は 0.67%と約 50 倍高かった.
死亡事案は 220 件あり,特に 70 歳以上の高齢者の死亡が 164 件と全体の 3 / 4 をしめた.
前処置
前処置前処置に伴う偶発症は、0.0028%(36000検査に1回)、死亡率は0.0005%(200万件に1回)偶発症は鎮静が最も多い
偶発症の内容は,鎮静・鎮痛薬関連 219 件(46.5 %),腸管洗浄液関連 105 件(22.2%),咽頭麻酔 関連 39 件(8.3%)の順であった.
死亡者数は 9 例で,そのうち鎮静薬関連 4 例(44.4%),腸管洗 浄液関連 3 例(33.3%)
鎮静の使用状況
上部消化管内視鏡(経口)の偶発症
最も多いのは出血であり,ついで裂創が多かっ た
部位別に検討すると,食道では,裂創(57 件) や出血(27 件)が多く,また,穿孔例も比較的多 いこと(14 例)が目立った.
胃では出血が 162 件 で偶発症の半数以上を占めており,次が裂創で 136例あった.
穿孔は十二指腸で26件みられ,球 部,下行部,水平部のいずれでも起こっていた.
上部消化管内視鏡(経鼻)の偶発症
鼻出血が圧倒的に多い
小腸バルーン内視鏡(経口)
急性膵炎の発症が多いことは知っておく必要がある。
大腸内視鏡検査の偶発症
大腸内視鏡検査での偶発症は 438 件報告され, そのうちケースカードの記載のあった 340 件では 穿孔が 200 件ともっとも多く,155 例(75.5%)で 手術が施行され,13 例(6.5%)が死亡していた
穿孔の部位は,小腸 1 例,盲腸 2 例,上行結腸 8 例,横行結腸 9 例,下行結腸 7 例,
S 状結腸 114 例,直腸 42 例であり,大半が S 状結 腸から直腸にかけての部位で起こっていた.
大腸EMRの偶発症
2,071 件中では出血が 1,880 件と 最も多く,穿孔(159 件),腹膜炎(23 件)がこれ に続いていた.
胃瘻造設の偶発症
196 例中,出血が 81 件,腹膜炎が 27 件,穿孔,裂創,肺炎がそれぞれ 24 件の順であり,死亡が 22 件であった
ERCPの偶発症
ERCPでは、やはり急性膵炎の発症率が高い その他には穿孔と胆道炎が続いている。
内視鏡偶発症と訴訟
医事紛争となった件数は,前処置関が 7 件,観察のみ(生検を含む)の検査が 24 件,治療関連が 21 件であった.前処置関連 1 件は係争中で他は すべて示談となっていた.治療関連で,裁判判決 にまで至ったものは 1 件のみ