山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

腰痛の鑑別 病歴や身体所見のポイントについてまとめた

 山内診療所では、筋膜リリースを行っており、腰痛・ひざ痛・肩の痛みに悩み受診される方も多いです。今回は腰痛について勉強しみたので、まとめてみました(^^♪

 外来を受診する患者さんの中でも腰痛や膝の痛みを訴える方が非常に多いです。腰痛症は頻度が高く、社会生活への影響も大きく、仕事ができなくなる方もいます。

 平成28年の国民生活糞調査によれば男性の9%、女性の12%が腰痛を自覚しているとの結果ですが、五島では高齢者が多く、さらに多い印象です( ゚Д゚)

 腰痛の多くの原因は急性腰痛など原因がわかることも多いけれども、、1/3の症例ではきっかけははっきりしないとされています。

 また社会心理的要因、肥満、喫煙が腰痛の慢性化に関与していることが指摘されています。

腰痛の病歴のポイント

病歴では、Red flag signに加えて、Yellow flags signがないか聴取します。 

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 Red flags signがあれば、画像検査を含めた検査をする必要性があります。f:id:takehiro0405:20200831173611p:plain

Yellow flags signとは、腰痛が慢性化に関与する様な因子をスクリーニングします

 

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腰痛の画像検査のタイミング

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腰部脊柱管狭窄症

腰部脊柱管狭窄症は神経の通路である脊柱管や椎間孔が狭小化することで、立位の継続や歩行により出現あるいは増悪する殿部下肢の疼痛や痺れ、会陰部症状を呈する症候群

腰椎椎間板ヘルニア

椎間板は髄核とその周囲を取り囲んでいる線維輪より構成される。高齢などで髄核の含水量の低下に、反復する捻転負荷が加わると線維輪に断裂する。
なぜか断裂は腰椎後縦靱帯の最も薄い後外側に多く発生し、髄核ないしは線維輪が後方に逸脱し、神経を圧迫することで発症する。

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脊柱管狭窄症などの身体所見一覧

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日本で腰痛に対して画像検査が頻繁に行われている現状

腰痛の場合、多くは画像検査をする必要がないとされているが、なぜ必要がないとされる画像検査を日本では、すぐに行うのか?

Hospitalist アレルギーの一部に特集があり引用させて頂きます。

①患者が希望する。

日本では国民皆保険のため安価に画像検査行うことができ、患者が画像検査を強く希望する傾向にある。

②稀な疾患が見つかることがある。

腰痛の原因で悪性腫瘍、感染症、炎症、骨折などを経験した、または話を聞いたりするとその後の検査に対する閾値が低下する。

③医療訴訟対策として

画像検査をしなかったことによる見逃しを指摘されたくないとの思いから画像検査に対する閾値が下がる。

④画像検査へのアクセスが容易である。

日本では人口あたりの CT や MRI 保有台数が圧倒的に多く、かつ医療費が安いため画像検査行う傾向にあると思われる

しかし、どうして容易に頻回に画像検査をするべきではないのか?

①画像検査には偽陽性が多い。

腰痛のない100名の正常患者に対して MRI の検査を行うと。多くに異常が指摘されている。

つまり症状がない人でもMRIで異常が指摘されるため、画像検査の異常が腰痛の原因なのかは不明ということ

②画像検査行っても治療方針に影響が少ない

③画像検査行うことで休職期間が延長して可能性がある。

④画像検査の費用対効果が低い。