山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

MKSAP Questions8: Neurology

53歳の女性が、
 
9か月前に診断された行動障害型前頭側頭型認知症のための夫に連れられてクリニックに来た
彼女の症状は、時折みられる失語症、軽度の記憶障害、行動の脱抑制、および強迫性行動であり、診断されて以来悪化し、破壊的になっている。
近所のゴミ箱から集めたペットボトルが入った大きな袋を2週間前に孫娘の誕生日会に持ち込んだ後、息子とその家族から疎遠になっている。 彼女の夫は彼女の症状をコントロールするための薬について尋ねている。
 
推奨できる最も適切な薬剤はどれか 
A Citalopram(シタロプラムSSRI
B Donepezil(ドネペジル®︎)
C Memantine(メマリー®︎)
D Methylphenidate(メチルフェニデート®︎:精神刺激薬)

 

E Olanzapine (ジプレキサ®︎;非定型抗精神病薬
 
 行動障害型前頭側頭型認知症・・・なかなか出会わないような気がするが・・・
前頭側頭型認知症の有病率は、人口10万人あたり2~10人、すべての認知症のおよそ5%を占めると考えられているが・・・・どうしたものか?
まあドネペジルやメマリーは、ほぼ意味ないような薬ですから、それ以外の薬が正解なのでしょう。
正解は、A
 
Keypoint‼️
治療法がなく対症療法のため、困っている症状を治療することが大切である。
今回は強迫性障害などの行動異常に対しての治療としてSSRIを用いる。
 
 
・前頭側頭型認知症
主に前頭葉と側頭葉を中心に神経細胞が障害され、それによって行動や精神、言語などに症状が出てくる認知症
前頭葉:思考、感情、物事の判断などをつかさどっており、人格・理性・社会性に大きく関係側頭葉:言葉、聴覚、記憶とか感情に関与
前頭側頭型認知症では、これらの機能が低下するので、行動や精神、言語などにさまざまな症状が出てくる。
いずれも、アルツハイマー認知症とは違って、65歳以下の比較的若い人がかかる認知障害
 
「行動障害型」と「言語障害型(「意味型」「非流暢性型」「言語減少型」)」の2つに分類
 

(1)行動障害型前頭側頭型認知症
・早期の脱抑制行動:社会的に不適切で、礼儀やマナーが欠如し、衝動的で無分別な行動
 例)万引き、痴漢など反社会的行動。道徳観が低下するので罪悪感を感じない、など。
・早期の関心低下や無気力
 例)家事をしない、質問しても真面目に答えない、ひきこもる、など。
・感情の麻痺
 例)他人への興味がなくなる、共感や感情移入ができない、など。
固執・常同
 例)同じメニューを作る、なくなるまで食べ続ける、時刻表的な生活、など。
・食習慣の変化
 例)同じものばかり食べる、甘いものを過剰に食べる、など。
・遂行機能の障害
 例)行動を計画立ててできない、など。

(2)言語障害型前頭側頭型認知症
a 意味型
物の名前が出てこなくなったり、知っているはずの言葉を理解できない。読めなくなったり書けなくなったりもするが、自分から言葉を話すのは流暢にできる。
b 非流暢性型
流暢に話せなくなります。自ら話すときにも文法が崩れてしまう。
 c 言語減少型

アルツハイマー認知症とは異なり、認知機能の低下はそれほど顕著ではなく、自分が病気であるという自覚はないため、しばしば医療機関の受診が遅れる

 

治療方法はないが、行動障害を改善するためにSSRIの使用が推奨されている。

発症後の生存期間は6~11年。診断がついてからは3~4年くらいの予後の悪い疾患