山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

マイコプラズマ肺炎ってどんな病気なの?

2025年は、マイコプラズマ肺炎が大流行し、長引く咳で多くの子どもが受診しました。そこで、今回マイコプラズマについて、一般の人にもわかりやすくまとめてみました。

  1. マイコプラズマとは?

マイコプラズマは、細菌の仲間ですが 細胞壁を持たない 特殊な微生物です。この特徴のため、普通の細菌に効く抗生物質は効きません。
主に 咳やくしゃみの飛沫で人から人へうつり、家族内感染は 90% に達するとも言われます。潜伏期間は長く、2〜3週間後 に発症することが多いです。

  1. いつ・どんな人がかかりやすい?

・季節:夏〜秋に多い ものの、1年中発生します
・年齢:すべての子どもに発症
・特に 5歳以上の学童〜中高生 で、肺炎の原因としてもっとも多い細菌の1つです
・乳幼児でも感染しますが、風邪のような軽い症状で済む場合があります

大規模調査では、子どもの肺炎の 約8%マイコプラズマによるもので、その割合は年齢とともに増えます。

  1. どんな症状が出るの?

(1)典型的な症状:ゆっくり始まる風邪のような症状から肺炎へ

マイコプラズマ肺炎は、一般に ゆっくり進行する のが特徴です。

主な症状

  • 発熱(ほとんどの子どもで見られる)
  • 長く続く咳(数週間〜数か月続くことも)
  • 頭痛
  • のどの痛み
  • だるさ・食欲低下
  • 息苦しさ
  • 胸の音の異常(医師の診察でわかるもの)

小学生〜中高生で特に多く、体温は高熱のこともあれば微熱のままのこともあります。

(2)たちの悪い“長引く咳”

咳は乾いた「コンコン」という咳で、長く続くことが特徴的です。

(3)上気道症状だけのことも

  • のどの痛み
  • 鼻水
  • 耳の痛み
    など、普通の風邪と区別がつかない症状だけで済む子どももいます。

(4)重症化することは?

多くは軽症〜中等症ですが、重症肺炎 になるケースもあります。

(5)肺炎以外にも症状が出ることがある

マイコプラズマは免疫反応を強く刺激するため、肺以外にも症状が出ることがあります。

代表的なもの

  • 皮膚・口のトラブル(25%)
    ・発疹
    口内炎
    ・目の充血
  • 溶血性貧血(赤血球が壊れやすくなる)
  • 脳神経のトラブル(0.1%)
    脳炎
    ・けいれん
    ・ふらつき
    ・ギランバレー症候群
  • 消化器症状
    ・腹痛
    ・下痢
    ・嘔吐

これらが単独で出ることもあり、肺炎が軽くても皮膚や神経の症状が重く出る子どももいます。

  1. どうやって診断する?

(1)検査は必ずしも必要ではない

軽症の子どもの肺炎は検査をしなくても、経験的に治療が成功することが多いため、外来では検査しないことも一般的 です。

(2)検査をするのはどんなとき?

  • 長引く咳
  • 入院が必要な肺炎
  • 呼吸以外の症状(皮膚・神経など)が強い
  • 重症化のリスクがある

(3)行われる検査の種類

  1. 迅速検査
  2. 血液検査(抗体:IgM・IgG)
  3. 胸部レントゲン
  1. 治療はどうする?

(1)使える薬・使えない薬

使えない薬

細胞壁がないため、これらは効きません。

使える薬(細胞の内部を攻撃する薬)

  • マクロライド系(第一選択)
     ・アジスロマイシン
     ・クラリスロマイシン
  • テトラサイクリン系(8歳以上)
     ・ドキシサイクリン
  • フルオロキノロン系(特殊な場合のみ)
     ・レボフロキサシン

(2)推奨される治療期間

  • アジスロマイシン:5日間(1日目のみ多く)
  • クラリスロマイシン:7〜10日
  • ドキシサイクリン:7日

(3)薬を使わなくても治る?

はい、軽症のマイコプラズマ肺炎は自然治癒することがあります。
しかし 咳が長引いて学校に行けない、肺炎が悪化していく 場合には治療が必要です。

  1. マクロライド耐性とは?

最近問題になっているのが、マクロライド系の薬が効かない菌(耐性菌) の増加です。
日本では地域差がありますが、耐性率は高い地域で20〜50% に達します。

「薬を飲んでも 48時間以上熱が下がらない
「咳がどんどん悪くなる」
場合、耐性が疑われます。

その場合は

  • ドキシサイクリン(年齢問わず短期間なら歯の着色リスクは小さい)
  • レボフロキサシン(最終手段)
    などへの切り替えが検討されます。
  1. 特別な症状がある場合の治療

(1)皮膚・粘膜の症状(重い口内炎など)

「RIME(ライム)」と呼ばれる重い粘膜症状が出ると、

  • 入院
  • 眼科・皮膚科の治療
    などが必要になることがあります。

(2)脳炎などの神経症

非常にまれですが、死亡例や後遺症が残ることがあります。

治療は

  1. 予後(治るの?)

ほとんどの子どもは 完全に回復 します。
咳は数週間残ることが多いですが、肺炎後の一般的な経過です。

以下の場合は注意

  • 呼吸が苦しい
  • 高熱が続く
  • 意識の変化
  • 皮膚・口の広い範囲のただれ
  • けいれん

これらは早急に医療機関で評価が必要です。

  1. まとめ
  • マイコプラズマ学童〜中高生で多い肺炎の原因
  • ゆっくり始まり、咳が長く続く
  • 肺炎以外に 皮膚・神経・血液 の症状も
  • 診断は PCR が中心
  • 治療は マクロライド が第一選択
  • 耐性の場合は ドキシサイクリンレボフロキサシン
  • ほとんどはよく回復するが、まれに重症化あり