山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

「最近、髪が薄くなったかも?」と思った方へ|男性・女性の脱毛治療

 
男性と女性では、脱毛の原因や治療法が大きく異なります。
今回は、当院でもご相談の多い「男性型脱毛症(AGA)」と「女性型脱毛症(FAGA・FPHL)」について解説します。

なお、本記事は、男性型脱毛症および女性型脱毛症の医学文献をもとに作成しています。

 


男性・女性の脱毛症について

「最近、髪のボリュームが減ってきた」「抜け毛が増えた」と感じる方は少なくありません。

脱毛症は早めに治療を始めるほど効果が期待できるため、気になる症状があれば早めの受診をおすすめします。

男性型脱毛症(AGA)とは?

男性型脱毛症(AGA)は、男性ホルモン(ジヒドロテストステロン:DHT)の影響によって起こる進行性の脱毛症です。前頭部や頭頂部の毛が細くなり、徐々に抜け毛が増えていきます。

主な特徴

  • 生え際が後退する
  • 頭頂部が薄くなる
  • 毛髪が細く短くなる
  • 徐々に進行する

女性型脱毛症(FAGA・FPHL)とは?

女性型脱毛症(FAGA・FPHL)は、頭頂部を中心に毛髪全体のボリュームが減少する脱毛症です。男性のように完全に脱毛することは少なく、分け目が目立つようになるのが特徴です。

主な特徴

  • 分け目が広がる
  • 髪全体のボリュームが減る
  • 抜け毛が増える
  • びまん性に進行する

当院で行う主な治療

男性(AGA)

ミノキシジル外用薬

毛包を活性化し、発毛を促進します。

  • 頭皮の血流改善
  • 毛髪の成長期の延長
  • 毛包の活性化

治療開始後2か月ほどは、一時的に抜け毛が増える「初期脱毛」が見られることがあります。

フィナステリド内服薬

AGAの原因となるDHTの産生を抑制します。

期待できる効果は以下のとおりです。

  • 抜け毛の抑制
  • 毛髪の太さの改善
  • 毛髪密度の増加

副作用として、性欲低下や勃起機能低下などが報告されています。


女性(FAGA・FPHL)

ミノキシジル外用薬

女性の脱毛治療における基本的な治療です。

期待できる効果は以下のとおりです。

  • 毛髪密度の改善
  • 毛髪の成長促進
  • 抜け毛の抑制

スピロノラクトン

女性ホルモンへの影響を考慮しながら使用する内服薬です。

  • 抜け毛の抑制
  • 毛髪密度の改善
  • 頭皮環境の改善

妊娠中や妊娠の可能性がある方には使用できません。


治療を始めるタイミング

脱毛症は進行性の疾患です。

次のような症状がある場合は、一度ご相談ください。

  • 抜け毛が増えた
  • 生え際が後退してきた
  • 頭頂部が目立つようになった
  • 分け目が広がってきた
  • 髪にハリやコシがなくなった

よくある質問

Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか?

一般的には3~6か月程度かかります。十分な効果を判断するには、6~12か月程度の継続が必要です。

Q. 治療をやめるとどうなりますか?

AGAやFAGAは進行性のため、治療を中止すると徐々に元の状態へ戻ることがあります。


山内診療所では、患者さま一人ひとりの症状や生活スタイルに合わせて、無理のない治療方法をご提案しています。気になる症状がありましたら、お気軽にご相談ください。

日焼けについて

日焼けの真実

― 医学的に意外な5つの事実と、細胞レベルで起きている「遺伝的リスク」の正体 ―

 

夏の海、キャンプ、スポーツ、畑仕事。私たちは日常の中で大量の紫外線を浴びています。そしてその結果として起こるのが「日焼け」です。

多くの人は日焼けを「肌が赤くなるだけ」「数日で治るもの」と考えています。しかし医学的に見ると、日焼けとは単なる“火照り”ではありません。

それは、紫外線によって皮膚細胞のDNAが傷つき、体が必死に炎症反応を起こしている状態です。つまり、日焼けとは「皮膚の軽いやけど」であり、細胞レベルでは生存をかけた戦いが始まっています。

さらに重要なのは、繰り返す日焼けが皮膚がんや皮膚老化のリスクを高めることです。日焼けしやすい体質そのものが、将来のメラノーマ(悪性黒色腫)などに対する“遺伝的感受性”のサインでもあります。

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そもそも日焼けとは何か

日焼けとは、紫外線(UV)を過剰に浴びることで起こる急性炎症です。

紫外線には主に2種類あります。

  • UVB(紫外線B波)
    → 赤み・炎症・水ぶくれの主原因
  • UVA(紫外線A波)
    → シワ・たるみ・皮膚老化に関与

特に日焼けを強く引き起こすのはUVBです。

紫外線を浴びると、皮膚細胞のDNAが傷つきます。すると体は「細胞が危険な状態にある」と判断し、炎症反応を起こします。

血管を広げ、炎症物質を放出し、傷ついた細胞を排除しようとします。その結果として、

  • 赤み
  • 熱感
  • ヒリヒリ感
  • 痛み
  • 腫れ

などが現れます。

 

意外な事実①

日焼けは「遅れてやってくる」

日焼けの赤みは、太陽を浴びた瞬間には出ません。

通常、

  • 3〜5時間後に赤みが出始め
  • 12〜24時間後にピーク
  • 72時間程度で軽快

という経過をたどります。

つまり、「まだ赤くないから大丈夫」と思って外に居続けるのは危険です。

見た目に変化が出る前から、皮膚ではすでにDNA損傷が始まっています。

特に重要なのが「日焼け細胞」です。

これは、DNAが深刻に壊れた細胞が、癌化を防ぐために自ら死ぬ現象です。医学的には

「p53依存性アポトーシス」と呼ばれます。

つまり、日焼けの赤みが出る頃には、体はすでに“異常細胞の処理作業”を始めているのです。

意外な事実②

肌が黒い人も日焼けする

「色白の人しか日焼けしない」というのは誤解です。

確かに、肌が濃い人は紫外線への耐性が高く、赤くなりにくい傾向があります。しかし、決して無敵ではありません。

実際、英国の研究では黒人の50%以上が生涯で日焼けを経験していました。

問題なのは、肌の色が濃い場合、典型的な赤みが目立たないことです。

その代わり、

  • 数日後の皮むけ
  • ヒリヒリ感
  • 色素沈着

として現れることがあります。

つまり「赤くなっていない=ダメージがない」ではありません。

意外な事実③

お酒は日焼けを悪化させる

意外ですが、アルコール摂取は日焼けを悪化させる可能性があります。

ビーチでの研究では、飲酒していた人の方が、

  • 日焼け範囲が広い
  • 水ぶくれが多い

という結果が報告されています。

理由として、

  • 水分不足
  • 注意力低下
  • 日焼け止めを塗り直さない
  • 抗酸化力低下

などが考えられています。

海辺のビールやBBQは楽しいですが、その分だけ紫外線対策と水分補給が重要になります。

意外な事実④

「日焼けサロンで下地」は逆効果

「先に焼いておけば本番で焼けにくい」という考え方があります。

しかし医学的には、これはほぼ否定されています。

日焼けサロンの多くはUVA主体です。

UVAは肌を黒く見せますが、それは既存メラニンを酸化させているだけで、本当の意味での防御力はほとんどありません。

つまり、

「肌を守る準備」

ではなく、

「事前に皮膚へダメージを追加している」

に近い状態です。

しかもUVAは、

  • シワ
  • たるみ
  • 光老化
  • 皮膚がんリスク

にも関係しています。

意外な事実⑤

「Hell’s Itch(地獄の痒み)」という謎の症状

重度の日焼けの2〜3日後、一部の人に猛烈な痒みが出ることがあります。

これは「Hell’s Itch(地獄の痒み)」と呼ばれます。

特徴は、

  • 強烈な痒み
  • 刺すような痛み
  • 灼熱感
  • 我慢できない不快感

です。

しかも、なぜ特定の人だけに起きるのか、医学的にはまだ完全には解明されていません。

日焼けが単なる皮膚表面の問題ではなく、神経系にも影響する複雑な現象であることを示しています。

日焼けで実際に起きていること

紫外線を浴びた皮膚では、

  • DNA損傷
  • 炎症物質放出
  • 血管拡張
  • 免疫反応
  • 細胞死

が同時進行しています。

特に重要なのは、

「繰り返すほど修復エラーが蓄積する」

ことです。

これが、

  • シミ
  • シワ
  • 皮膚老化
  • 皮膚がん

へつながっていきます。

実はステロイドは強く推奨されていない

日焼けすると「ステロイド塗れば早く治る」と思う人もいます。

しかし現在の医学的エビデンスでは、ステロイドが明確に回復を早める証拠は十分ではありません。

むしろ重要なのはシンプルな対処です。

推奨される対処法

① 冷やす

  • 冷タオル
  • 冷水シャワー
  • 保冷剤(当てすぎ注意)

で炎症を落ち着かせます。

② 保湿する

  • アロエジェル
  • 保湿剤
  • カラミンローション

などで乾燥を防ぎます。

③ 水分補給

日焼けでは皮膚から大量に水分が失われます。

脱水予防が非常に重要です。

④ 痛み止め

イブプロフェンなどのNSAIDsが推奨されます。

危険な日焼けのサイン

以下がある場合は医療機関受診が必要です。

  • 広範囲の水ぶくれ
  • 強い痛み
  • 高熱
  • 吐き気
  • 脱水
  • 意識障害

重症では点滴や入院が必要になることがあります。

日焼け予防で最も重要なこと

「焼かないこと」が最強

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日焼けの予防と治療ガイド

生成された画像:日焼けの予防と治療ガイド



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最も重要なのは予防です。

  • 午前10時〜午後4時を避ける
  • 帽子
  • 長袖
  • サングラス
  • SPF30以上の日焼け止め

を組み合わせることが重要です。

日焼け止めは、

  • 外出15〜30分前
  • 十分量
  • 2時間ごと塗り直し

がポイントです。

まとめ

日焼けは単なる「夏の赤み」ではありません。

その本質は、

  • DNA損傷
  • 炎症
  • 細胞死
  • 将来の皮膚がんリスク

を伴う、生体防御反応です。

私たちの皮膚は、紫外線を浴びるたびに必死に修復を繰り返しています。

つまり日焼けとは、「肌が傷ついている」という体からの警告なのです。

次に強い日差しの下へ出る時、あなたは自分の肌をどう守りますか。

その選択が、10年後、20年後の皮膚の健康を大きく左右するかもしれません。

 

みつばち飼う人この指とまれ! 長崎県五島列島に「日本ミツバチ再生プロジェクト」

高文研が2013年に出版した本、「みつばち飼う人この指とまれ!」という本があります。

全国のニホンミツバチ飼育家28人が自分の飼育の実際を公開した、初めての本です。

アマゾンで中古で買うことができます。

私の父「宮崎昭行」が、長崎県五島列島に「日本ミツバチ再生プロジェクト」という名のもと、五島列島には以前は日本ミツバチが住んでいた形跡がありましたが、既に絶滅していたことをきっかけに、日本ミツバチを五島列島で復活させる活動を行った内容が記されていました。

 

現在では、このプロジェクトは成功し、五島列島では、多くの方が日本ミツバチを飼育されています。その最初のきっかけになった苦労した話などが書いてあり、多くの方に読んでもらおうと思い記事内容を掲載します。

 

はじまり

私が日本ミツバチの養蜂を始めたきっかけは、私のライフワークの原点である「エネルギーを含めた自給自足」つまり、環境・エネルギー問題が根本である。近代化が進むにつれて、自然破壊が起こり、エネルギーの使用は急激に増加している。私はその問題に向き合うため、かつて自然と共存をしていた古人たちの生活の知恵を学び、自給自足に取り組むことにした。蜜蜂の養蜂はそのような考えのもとに始めたものである。


養蜂を始めるまでの過程

2000年、自給自足の生活を実現させるため、市街地の長崎から五島へ移り住んだ。まず初めに取り組んだことは、合鴨農法による無農薬米を作り、馬耕または牛耕で田を耕すことだった。これにより自分たちの食べる米を作ることができた。しかしこれだけでは人間の食生活に欠かせない、塩・糖を手に入れることが困難である。そこで糖を得るために考えたのがミツバチの養蜂である。さらに、ミツバチは植物受粉においても大きな役割を果たすことが、自給自足を目指す私にとってはとても重要な取り組みとなった。
しかし、ミツバチの養蜂を始めるにあたっては問題があった。それは養蜂について詳しい人が見つからなかったことである。そこで、まずは趣味で養蜂をしている方から西洋ミツバチの箱を1箱購入し、自分なりに工夫をしてみたが、1年で滅びてしまった。
そんな時、個然にも日本ミツバチを飼育している久志富士男氏と知り合うことができた。久志氏は日本ミツバチに関して極めて造詣の深い方であり、同じ長崎県の佐世保に住まわれていたため、早速、久志氏に五島に来てもらい現地調査をしてもらうことができた。そして、久志氏よりミツバ手に関する知識や蜂額の作り方などの基礎知識をすべて学ぶことができたことが、これから始める五島日本ミツバチ再生プロジェクトの大きな支えとなった。
日本ミツバチを養蜂するにあたり、久志氏に調査を依頼したところ、私たちの住んでいる福江島だけでなく五島列島自体に日本ミツバチが生息していないことが解った。聞き取り調査によると、戦前は生息していたようである。何故絶滅したか理由は明確ではないが、炭焼き後の針葉の植林、葉タバコの乾燥の燃料としての伐採による広葉間の減少、農薬などが推察される。そこで、島外より日本ミツバチを導入するという日本ミツバチ再生プロジェクトが久志氏の指導の下、私一人で始まった。


日本ミツバチ再生プロジェクト

まず初めにとりかかったのが、日本ミツバチを五島に導入するため、待ち箱にミツバチを入れるということである。久志氏より、島原が 1990年の火砕流の後、人が入れない区域に日本ミツバチが繁殖していると聞き、
2007年より毎年約 30箱の待ち箱を島原に設置した。3年間同じように待ち箱を設置することで、合計で約30~40群を捕まえることができた。
次に考えるべきことは、ミツバチが入った蜂箱を島原から五島に運ぶということである。しかしここで問題なのは、昼間は働き蜂が外に出ているため、日没後に分蜂を閉じこめ、深夜に移動をしなければいけないということであった。そこで、日没後に蜂額を動かし、深夜に長崎までトラックで移動し、フェリーで長崎から五島列島まで動かすという計画を立てた。
しかし、移動にはやはり困難を伴うもので、一度だけフェリーの中で蜂箱から蜂が大量に逃げ出し、貨物室に教千匹の蜂が舞うという事態になってしまった。その時は、昆虫が光の方向に飛ぶという原理を利用し、蜂には可変そうなことだったが、船の貨物室の電気を消し、走行中のフェリーの扉を開けて外に出すことで事無きを得た。この過程を繰り返し、ようやく日本ミツバチを多数五島に連れてくることができた。
ここで、何故こんな困難な作業をしてまで30~40群という多数の分蜂を捕まえたのかと疑問に感じる方もいるだろう。私が五島に日本ミツバチを導入するにつれて、特に注意したことは、数が少ないことによる近親交配である。一時的には変化が見られなくとも、五島の島の閉鎖空間では長い時間の中で滅びる危険性があると考えた。私が始める以前に日本ミッバチの養蜂を五島で始められた方がいたが、2群程度で始めたため、蜂の性格に変化が生じ、人を刺すようになったそうだ。30~40群で十分なのかは不明だが、現時点では農薬を散布する田畑の近辺以外は良く繁殖しており、性格も穏やかである。
次に取り組んだことは、五島で日本ミツバチの養蜂愛好者を増やすことである。日本ミツバチの分蜂を一人で全て捕まえるのは困難であるため、五島で日本ミツバチをさらに増やすためには養蜂愛好者の協力は不可欠だ。
対馬では日本ミツバチ養蜂の伝統があるが、五島には西洋ミツバチのプロの養蜂家か、ハウスでのほぼ使い捨ての西洋ミツバチを扱う農家しかいなかった。
そこで、日本ミツバチの養蜂は西洋ミツバチより簡単で素人でも飼えること、蜂蜜はとてもおいしいこと、果物や野菜の受粉にとても重要な役割を果たしていることを、いろいろな場でアピールした。すると、2008年には、蜜蜂がいないため人間の手で受粉させているというカボチャ農家が養蜂を開始することとなった。現在では、人間が受粉するより成績が良いとのことである。
その後、口コミで徐々に養蜂愛好家が増え、2011年、「五島和蜂の会」を発足した。現在、会員25名及び非会員数名が日本ミツバチを養蜂している。その中にはイチゴのビニールハウスの外に蜂箱を置き、ハウスの中と外を自由に飛べるようにすることで、イチゴの受粉率をほぼ100%にしいる農家もいる。この方法も久志氏の指導で比較的うまく進行している。
唯一難点なのは、蜂がハウスの中で死んでしまうことがあるため、永続するにはかなりの注意が必要ということである。
また、五島は椿油で有名であり、たくさんの椿が自生し、植林もされている。その受粉には、メジロと日本ミツバチが関与していると考えられているが、最近メジロが減少傾向にあり、受粉率が悪いようである。そこで、五島市の農林課が日本ミツバチの受粉の役割を調査し始めた。


また、日本ミツバチが受粉に深く関与していると考えられる観測結果が上のグラフである。(グラフ:巣箱重量調査結果)これは棒林に置かれた蜂箱の重量を継時的に測定したものである。一般的には冬季はミツバチによる蜜の採取が減り、それと共に蜂箱の重量は減っていく。しかし図が示すように五島では、冬季における蜂額の減量が少ないようである。これは比較する資料が無いためあくまで推測となるが、冬季の間にミツバチが確の花から蜜を採取し、それが冬季における蜂額の減量を少なくしているものと考えられる。現在、五島市の農林課と調査しているが、これらの調査が今後のプロジェクト発展に繋がることを期待している。

さらに、2012年には初の蜂蜜品評会を行なった。私はその鑑定の審査員を務めたが、同じ日本ミツバチの百花蜜であるにも関わらず、採取する場所や時期によって、香りや味の違いが出ることに驚かされた。

 

蜂箱の形

初めは久志氏の考案した蜂箱を使った。重箱式で1段が横2方向の内径25cm、高さ120mで、この枠の一番下に出入り口の枠を付けるという形である。しかし、その後、神社の境内に作った大きな自然巣の観察をしている内に面白いことに気付いた。お参りする神社の小さな社の床下、横幅1.5m四方、高さ 50cmの空間に巨大な巣を作っており、巣の出入り口は基礎コンクリートと横壁の四方に高さ1cm、幅1.3mという形で空いていたのだ。お参りする人を刺さぬよう、その出入口の約半分を閉めておいた。すると数日後、社の下方の閉ざした出入り口より液体が染み出していた。それを舐めると蜜ではなく水であり、その水の近くには他の昆虫がいたのだ。

これは出入り口を狭くしたことにより換気が悪くなり、結露したことが原因である。その水によって他の昆虫を呼んでしまうのだ。蜂は糖度10%程度の花の釜を蜂箱の中で80%にまで濃縮する。蜂の巣箱の中は高湿度で、蜂の健康と糖度の濃縮には換気が極めて大切なのである。それ以降、十分な換気に成るかは解らないが、冬の寒さ対策も考慮し、出入り口を箱の前後に付けることにした。
また、私は仕事のため時間がなかなか取れず、1年1回の採蜜をしている。その間、蜂群が大きくなった場合は継箱しているが、5段以上にな箱が高くなり不安定であること、高くなると採徴の最上段は蜜が少ないことに気付き、2013年より箱の内径を 25cmから30cmにした。(左上写真)そうすると、縦と横を5cm大きくするだけで体積は約1.5倍となる。そして、高さは4段以上にはしないようにした。今年 2013年開始して、現段階では分蜂は上手く入っている。採蜜が上手く行くかは今年の暮れの楽しみである。乞うご期待。


蜂箱の設置場所

初めは診療所の近所を基点に、いろいろなところに設置した。しかし、しばらくすると、田んぼ周辺の蜂箱が死滅していることに気づいた。原因はネオニコチノイドなどの農薬と考えられる。そのため、現在は水田より500m以上離れた場所で、かつ広葉機の多いところを中心に40~50箱ほど設置している。(右上写真)
また、もう一つの問題は、直射日光の当たる所の巣箱がほとんど死滅するか、巣箱の中の巣が溶けているのが観楽されていることである。これは地球温暖化の影響も考えられるが、原因は明確ではない。今後は木陰にのみ設置することにしている。


飼育方法・ミツバチとの付き合い方

養蜂初期は蜂箱の分蜂を捕まえるというスタイルだったが、分蜂を捕まえるのには時間がかかるため、現在では待ち箱を多数作り、蜂の入りそうな場所に盛期を誘因剤として置いている。分蜂の入っていない箱はなるべく梅雨頃に回収している。

また、個数としては1か所に巣箱はせいぜい5箱(普通2~3箱)としている。これは、日本ミツバチは西洋ミツバチと違い、砂糖水を与えないからである。そのため、設置場所が広範囲になってしまい、全ての巣箱の箱の継ぎ足しや周囲の草を取り除くという作業ができない場合もある。中には採蜜以外ほとんど見に行かない蜂箱もあるのが現状であるが、特に問題なく採取できている。
蜂箱を設置する場所に関しては、できる限りその土地の持ち主の許可を得るようにしている。しかし場合によっては人通りの少ない道路傍に勝手に置く場合もある。対馬ではそのような伝統があり、五島でもその習慣を根付かせることができればと期待している。


蜜の採取

島原から分類を抽まえて来た時は、五島で日本ミツパチを増やすことを主眼にしていたため、たくさんの分蜂群を得るために採蜜は少なめにしていった。しかし、今は五島福江島全土に日本ミツバチが広がっているため、


ことができた。
1箱より3〜6kg程採蜜しており、昨年(2012年)は約100kg採蜜する

 

採蜜の時期は10~11月の間、年に1度だけ行っている。蜜が多く取れる春に採蜜すると、もっと多く採れると思われる。蜜絞りは巣礎の入ってない重式であるが、果を取った後枠組みに入れ、遊心分離機で分離している。
蜜蜂を飼って思うこと
今まで昆虫が可愛いと感じることはあまりなく、昆虫の気持ちを理解するということを考えもしなかった。しかし、久志氏が蜂の気持ちが解ると言った時、最初は理解できなかったが、ミツバチと過ごすにつれて、次第にその意味が解るようになった。
また、一般的にはスズメバチは悪い危険な昆虫と思われているようだが、久志氏が言うには、スズメバチが他の昆虫を食べ、そのおかげで野菜の害虫が減るといった自然のネットワークで重要な役割を果たしている可能性が有ることを指摘し、スムシについても巣箱の掃除の役割があると考えている。私もその考えに納得している。私たちは、自然界の神秘にもっと耳を傾ける必要を感じた。



ネオニコチノイド系農薬が使用され始め、五島でも日本ミツバチが随分死んでしまった。しかし、ヘリコプターでの空中散布が無いため、500mほど離れると何とか大丈夫なようである。養蜂を始めて、農薬がいかに環境を破壊し、人間にもその他の生物にも予想以上の影響を与えていることを改めて考えさせられた。
現在、自閉症が増えている原因は自然環境の変化、特に農薬などの化学物質が原因と考えられている。しかし、その証明は困難であると同時に、農薬製造会社が官僚や政府に働きかけ、農薬反対運動を無視するようにさせていることなど、改善には難しい現状である。これは、原発問題で電力会社が官僚や政治家やマスコミに圧力をかけ、いかに産業を誘導し、それが今回の福島原発問題につながったかを皆さんが理解したのと同じパターンである。
「日本は貿易立国だ」という偏った考えや、「科学が進歩すれば何でも解決できる」という科学信仰が日本人の深層心理にあるからだろう。私たちは、自然を支配できるのではなく、自然の恩恵で生きることができるということを再度認識させられた。
最後に、先日、急逝された久志富士男氏に謹んで哀悼の辞を述べます。
氏が日本ミツバチの飼育方法を広めなかったら、壱岐、五島列島の日本ミツバチの養蜂は遥かに遅れ、しかも拙劣な物になっていたでしょう。氏は、博学な養蜂の知識と
蜂の気持ちを理解されるまでに蜂を愛されていました。氏の情熱と知識により五島で養蜂ができると知り、胸が熱くなり、ワクワクしたのを今でも思い出します。氏の志を受け継げるよう、これからも精進してまいります。

【提言】日本のドローン物流の未来 米国製への依存からの脱却し国産技術の結集を!!

皆さん、ドローンという言葉を聞いたことがあると思います。

ここでは、日本のドローン開発による規制の壁など、これから日本のドローン開発を進める上で重要なことを提言します。

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日本のドローン開発は遅れている??

日本のドローン開発が米国や中国に比べて大きく遅れをとっている事実は、一般にはあまり知られていません。

その根本原因は、技術的な課題に加え、依然として厳しい規制の壁が社会実装を阻んでいることにあります。

アメリカでは、もともとは国主導でドローン開発がされていましたが、さすがはアメリカ、この規制を緩和し開発を急ぐために、民間主導に切り替え開発と実装が急速に進んでいます。

中国でも都市部上空での物流飛行が日常になりつつあります。一方、日本は周回遅れの状況にあると言わざるを得ません。

 

長崎県五島列島での先進的な取り組みを例に、日本のドローン産業が直面する「不都合な真実」を明らかにし、今後進むべき道筋を提言します。

これは五島での素晴らしい取り組みを否定するものではなく、日本が真の技術立国として空を制するための改善策です。

 

五島列島で先行する「日本初」の商用化、その実態は米国製

長崎県五島市では、2026年2月3日、処方薬のドローン配送がついに商用化されました。

これは、山内診療所や地元の調剤薬局と連携し、へき地や高齢者施設への医療アクセス問題を解決する画期的なモデルです。

昨今、ICTや医療DX化が注目されている中で、この取り組みは、「日本初」の素晴らしい成果であることは間違いありません。

sora-iina.com

 

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しかし、ここで冷徹な事実に目を向ける必要があります。この日常的な長距離配送を支えているのは、日本の技術ではありません。

五島で物流サービス「そらいいな株式会社」が運用しているのは、米国のベンチャー企業・Zipline(ジップライン)社の固定翼ドローンです。

この機体は、陸路で1時間かかる距離をわずか25分で飛行し、往復約160kmもの長距離飛行が可能です。

残念ながら、現在の日本のドローン技術には、これと同等の速度・航続距離・耐風性能を持ち、かつ日常的に安定して薬剤を配送できる機体が存在しないのが実情です。

 

国産ドローンの「レベル4」は実用段階にない

日本でも「レベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)」の解禁に向けた動きはあります。実際、2025年2月には五島市玉之浦地区で、日本のドローンメーカー(ACSL社)の機体を使用したレベル4飛行による配送実証が行われました。
その後、上五島地域でも同じような取り組みが行われました。

ACSL、全国初のエリア単位でのレベル4飛行配送実証に機体提供 - 国産産業用ドローンのACSL | 株式会社ACSL

テレビや新聞で「国産ドローンが有人地帯を飛行」と華々しく報じられることもありますが、これはあくまで単発の「実証実験」の域を出ていません。

この実証で使用された国産ドローンはマルチコプター型で、最大飛行時間は約20分、ペイロード(積載量)は1kg程度にとどまります。配送距離も片道数キロメートルが限界です。

このドローンは「東京からわざわざ機体を持ち込み、その時だけ飛ばす」ものであり、日常のインフラとして機能するにはスペックが不足しています。半径数キロメートルしかカバーできない現状の国産機では、広大な過疎地や離島での物流を担うには実用性に欠けるのです。

 

民間主導への転換と「ドローン特区」の創設を

今後、日本でドローン物流を真に普及させるためには、従来の「国主導の慎重なアプローチ」から、米国のような「民間主導のダイナミックな開発体制」へ切り替える必要があります。

特に五島列島のような離島や過疎地域こそ、ドローン実装の最適地です。現在の規制を大幅に緩和し、五島全体を「ドローン特区」のような状況に指定すべきです。

事業者が許可申請の都度膨大な書類を作成するのではなく、自由に、かつ高頻度でドローンを飛ばせる環境(サンドボックス)を作る必要があります。飛行回数を重ね、膨大なデータを蓄積することでしか、技術のブレイクスルーは生まれません。

 

「半径100km」を翔ける日の丸ドローンの開発を

日本のドローン産業が生き残るために必要なのは、補助金頼みの単発的な実証実験ではなく、Ziplineに匹敵、あるいは凌駕する「半径100km以上を運べるレベル4対応機体」の開発です。

そのためには、国は実証実験の費用を補助するだけでなく、基礎技術の開発や、リスクを取って挑戦する民間企業への大規模な支援を行うべきです。

日本の技術力を結集し、海外製に頼ることなく、自国の空を自国の技術で守り、支える。そのような「真のドローン社会実装」の実現が、今まさに求められています。

 

この記事が、多くの方の目に留まり、日本のドローン開発が進むことを祈っています。

山内診療所における処方薬ドローン配送の実践✈️

五島列島・玉之浦地区で始まったドローンによる処方薬配送の取り組み

 

五島列島では、そらいいな株式会社の協力のもと、ドローンを活用した薬剤配送の取り組みを行っています。
この取り組みは、2026年2月3日付の長崎経済新聞にも掲載されました。

今回、処方薬をドローンで配送している先は、玉之浦地区にある特別養護老人ホーム「たまんなゆうゆう」です。

調剤薬局がない玉之浦地区の現状

玉之浦地区には調剤薬局がなく、これまで薬を処方した際には、車で片道1時間以上かかる場所まで薬剤を取りに行く必要がありました。

往復する負担は非常に大きく、

  • 時間的なロス

  • 人手不足の中での業務負担
    といった課題が、介護現場・医療現場の双方にありました。

ドローン配送という選択肢

こうした状況を背景に、山内診療所の宮﨑岳大医師が
「ドローンで薬剤配送ができないか」と模索していたところ、
五島列島に拠点を置くそらいいな株式会社と連携し、処方薬をドローンで配送する取り組みが実現しました。

この取り組みは、医療現場へ定期的に処方薬をドローンで直接配送するという点で、全国でも初めての事例です。

定期配送だけでなく、緊急時にも対応

現在行っているのは定期的な処方薬の配送ですが、
それだけでなく、緊急に薬剤が必要になった場合にも、ドローンで迅速に届けることが可能です。

これにより、

  • 職員の移動負担の軽減

  • 必要な薬を必要なタイミングで届ける体制が整いつつあります。

過疎地・離島医療への可能性

過疎化が進む僻地や離島では、
「薬を取りに行くこと」そのものが大きな負担になるケースが少なくありません。

今回の五島列島での取り組みは、そうした地域における新しい医療・介護支援の形として、今後、全国へ広がっていく可能性を持っていると考えています。

 

2026年2月3日 長崎経済新聞に記事が掲載されました

「処方薬」のドローン配送商用化を実現

リリース発行企業:そらいいな株式会社

そらいいな株式会社(以下、そらいいな)は、長崎県五島市福江島において「処方薬」のドローン配送を開始しました。患者様から配送料を徴収し、山内診療所の医師の処方に基づいて調剤された処方薬を配送します。
本配送は、2025年11月より、玉之浦地区の特別養護老人ホーム「たまんなゆうゆう」(以下、たまんなゆうゆう)向けに開始いたしました。今後は、高齢化・過疎化の進む地域における医療アクセスの確保と医療・介護現場の負荷軽減に向け、取り組みを進めて参ります。

1. 背景(課題)
同施設では五島市福江島内の薬局から医薬品の定期配送を受けていますが、患者様の体調変化や往診の結果により急遽お薬の切り替えが必要となるケースがあります。その際、施設スタッフが五島市中心市街地の薬局へ車で片道約1時間かけて受け取りに行く必要があり、往復で約2時間を要しています。同日中の受取りが困難な場合は、翌日の受取りになるケースもあります。

2. 取り組みの概要
こうした課題に対し、そらいいなではオンライン服薬指導とドローン配送を組み合わせた取組を開始しました。
- 運用フロー
1.医師が往診、または、オンラインにて診察を実施し、処方箋を発行
2.処方箋を薬局へFAX送信(後日、原本を郵送)
3.薬局の薬剤師が処方箋を受領後、調剤及び、患者へのオンライン服薬指導を実施
4.そらいいなスタッフが調剤済みの処方薬を受け取り、発射拠点(五島市中心市街地から車で約5分)からドローンにて配送
5.施設スタッフが、たまんなゆうゆう周辺の受取場所(施設から車で片道10分)にて処方薬を受け取る
- 配送経路・方法
長距離飛行可能な米国Zipline社の固定翼ドローンを利用し、事前に飛行許可を取得した指定経路に沿って飛行させます。陸路では60分掛かる距離を25分で飛行可能です。ドローンは施設周辺に設けた受取場所に処方薬を配送します。


活用機体(Zipline社製固定翼機)


機体諸元

 

3. 取り組みの効果
そらいいなが施設/薬局から連絡を受けたのち、最短約60分で処方薬の受取が可能であり、必要なお薬をより迅速に患者様へ届けることが可能になります。
また、従来は往復約2時間を要していた移動時間を約20分へ短縮することができ、へき地では医療機関の統廃合が進み、高齢化により移動手段が減少する中、医療・介護施設の負荷を減らしながら医療へのアクセスを確保する取り組みとして位置づけられます。

4.今後の展開
本取組みはドローンによる処方薬配送の社会実装として全国に先駆けた取組みです。
今後は、五島市福江島内の高齢者施設に加え、福江島内各地域及び、五島市二次離島の住民様などに対する処方薬配送の可能性を検討し、地域の医療アクセス向上に向けた持続的な運用モデルの確立を目指します。

(実践編)煙突温度で読み解く黒炭作り

黒炭作りは、数日〜1週間かけて行われる「熱と空気のドラマ」です。窯の中は見えませんが、煙突の温度計(排煙温度)がすべての進行状況を教えてくれます。


第1段階:乾燥焚きと「蒸らし」(〜70℃)

まずは窯の中の木材(炭材)を温め、水分を抜く工程です。

  • スタート:焚き口で薪を燃やし始めます。最初は水分を多く含んだ白い煙(水煙)が出ます。

第2段階:着火の瞬間(83℃)

乾燥が進むと、いよいよ木材自体が熱分解を始め、自力で燃え始めます。

  • 【83℃】運命の「着火」

    ◦ 煙突温度が83℃(窯内温度は約275℃)になると「着火」とみなされます。

    ◦ 煙の変化:白い水煙から、「きわだ煙」と呼ばれる黄色がかった白褐色の煙に変わります。鼻につく刺激臭がするのが特徴です。

    ◦ アクション:焚き口での薪の投入をストップします。ここからは木材から出る可燃性ガスだけで温度を維持します。

第3段階:炭化と「調節棒」のコントロール(83℃〜300℃)

ここが最も長い「我慢の時間」です。急激に燃えすぎないよう、しかし温度が下がらないよう、調整します。

  • 温度維持の攻防(83℃〜90℃付近)

    ◦ この温度帯を長く維持することで、良質な炭になります。

 

第4段階:クライマックス「精錬(ネラシ)」(300℃〜420℃)

炭化の最終段階です。ここで一気に温度を上げ、不純物を焼き切って硬い炭にします。

 

  • 【300℃】精錬スタート

    ◦ 煙突温度が300℃を超え、煙の色が「青色」に変わったら精錬(ねらし)の合図です。

    ◦ アクション:煙突の口を全開にし、さらに窯の焚き口などを開けて空気を送り込み、激しく燃焼させます(「大燃え」とも呼ばれます)。

  • 【420℃】フィニッシュ(煙切り)

    ◦ 煙突温度が420℃(窯内温度は800℃〜1000℃)に達します。

    ◦ 煙の変化:青い煙が薄くなり、最終的に無色透明になります。これを「煙切り」と呼びます。

 第5段階:密閉と冷却(〜完成)

焼き上がったら、空気を遮断して火を消します。

  • アクション:焚き口、煙突、排煙口など、空気の入る穴という穴をすべて粘土などで完全に密閉します。
  • 冷却期間:ここで焦って開けると、酸素が入って炭が灰になってしまいます。完全に冷えるまで約1週間(季節による)待ちます。
  • 窯出し:十分に冷えたことを確認してから、ようやく黒炭の取り出しが行われます。

まとめ:黒炭作り温度管理タイムライン

  1. 〜70℃:乾燥焚き(70℃で一度塞いで「蒸らし」)
  2. 83℃:着火(燃料ストップ、「きわだ煙」発生)
  3. 83〜300℃:炭化(調節棒で温度キープ)
  4. 300℃〜:精錬開始(青い煙、空気全開)
  5. 420℃:完了(透明な煙、完全密閉へ)

 

煙突温度で読み解く黒炭作り(準備編)

 

火をつける前から勝負は始まっている!「窯入れ」の職人技

 

黒炭作りは、「原木の準備」と「窯への詰め方(窯入れ)」で、炭の出来栄えの半分が決まるとも言われています。

今回は、巨大なパズルのような「窯入れ」をご紹介します。

  1. 原木の準備:太さを揃える「薪割り」

まずは材料となる木(ミズナラやクヌギなど)の準備です。

  • 生木がベスト?: 意外かもしれませんが、黒炭作りには「水分を含んだ生木」が適しているとされています。乾燥しすぎていると急激に燃えてしまい、良い炭にならないことがあるからです。
  • サイズを揃える: 窯の高さに合わせて(例:1.5mなど)木を切り揃えます。 さらに、太さがバラバラだと焼きムラができるため、直径10〜12cm程度に揃えます。直径10cmを超える太い丸太は、薪割り機などを使って割ります。

    ◦ ポイント: 割った木は、心材(木の中心部)を、煙突側(奥側)に向けて配置するのがコツです。

  1. いざ「窯入れ」! 逆さまに積む理由とは?

 準備した木を窯の中に運び込み、隙間なく並べていく作業を「窯入れ」と言います。ここには物理学に基づいた職人のルールが存在します。

ルール①:元口(もとぐち)は「上」にする

木には根元側の太い方(元口)と、先端側の細い方(末口)があります。 炭焼きでは、太い方を上にして立てて並べます。

  • 理由: 炭化(炭になる反応)は、窯の上から下へと進んでいくため、熱分解されにくい太い部分を熱の強い上側に持ってくることで、焼きムラを防ぎます。

ルール②:奥から手前へ、種類を使い分ける

窯の中は場所によって温度や灰になりやすさが異なります。そのため、職人は場所によって置く木を変えています。

  • 奥(煙突側): 熱が回りやすく良質な炭になりやすいため、「一番良い木」を置きます。
  • 手前(焚き口側): 直火が当たり灰になりやすいため、「質の悪い木」や枝などを置きます(犠牲になっても良い木です)。
  • 壁際: 温度が上がりにくいため、雑木や割った木を詰めます。
  • 天井付近(上木): 木の上にさらに枝などを載せます。これを「上木(うわき)」と呼び、窯内の温度ムラをなくすクッションの役割を果たします。
  1. 最後は「壁」を作って密閉

 木をギッシリと詰め終わったら、入り口(窯口)を塞ぎます。

  • ブロックと泥で封鎖: 入り口にレンガを積み上げ、隙間を粘土や泥で完全に埋めます。

 次は、いよいよ「焚き口(たきぐち)」から点火していきます!

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まとめ

ただ木を入れているように見えて、「太い方を上に」「良い木は奥に」「悪い木は手前に」という緻密な計算が行われているのが「窯入れ」です。 このパズルが完璧にハマったとき、初めて美しい黒炭が生まれる準備が整うのです。