私が、学生時代に、ヒトメタニューモウイルスに感染し脳炎を発症した子供の、髄液PCR検査を依頼されて行ったことがあります。2007年くらいでしょうか。
ヒトメタニューモウイルスは、2001年、オランダの研究者たちが、子供の呼吸器疾患で新しいウイルスを発見し、それをヒトメタニューモウイルス(hMPV)と名付けたとのことです。
今回、ヒトメタニューモウイルスについて、まとめてみました。
感染経路
ヒトメタニューモウイルスの感染は、汚染された分泌物との直接または密接な接触によって発生すると考えられており、大きな飛沫での感染が原因とされています。
新型コロナウイルスやインフルエンザのような小さい飛沫ではないため、2m程度の距離があれば感染は防げるのではないかと考えられています。
潜伏期間
潜伏期間は5から9日と考えられています。
ヒトメタニューモウイルスに感染した子供は、改善後もある期間、ウイルスを排出します。そのため、改善した後も人に感染させる可能性もありますが、幼稚園や保育園、学校への登校は問題ありません。
臨床症状
- 咳 - 70-90%
- 鼻炎 - 44~77%
- 発熱 - 50~90%
- 喘鳴 - 51~56%
一般的なウイルス感染に特徴的な症状ですが、発熱に加えて咳が出現することが多い印象です。
さらに悪化した場合には、気管支炎(59%)、クループ(20%)、喘息の悪化(15%)、肺炎(8%)を発症することがあります。気管支炎だけでなく、クループや喘息の悪化があるので注意が必要ですね('Д')
ヒトメタニューモウイルスに感染し入院する主な理由は、急性気管支炎および肺炎だそうです。
RSウイルスとの同時感染がある場合、重症度が増加する可能性があり、注意が必要です。
特に2歳未満のRSウイルス感染に、ヒトメタニューモウイルスが同時に感染すると、集中治療室や人工呼吸器が必要になるリスクが10倍増加したとの報告があります。
稀に、脳炎になるとの報告もあります。
診断
冬に呼吸器症状(咳や熱)が出現した場合に、疑う疾患です。インフルエンザと同時期に感染するために、インフルエンザではない場合には、RSウイルス感染に加えて、ヒトメタニューモウイルスも考えなければなりません。
治療方針が変わらないとのことで、検査をする医療機関は、五島列島の福江島では、山内診療所しかないとのことでした。山内診療所では、ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの迅速検査も対応しており、咳症状が強く、気管支炎が疑われる場合には検査を行っています。
ヒトメタニューモウイルスの診断をすることで、悪化するリスクを考慮し、不必要な抗生物質の使用を避け、患者さんを適切に隔離することができます。
ただし、学校保健法には記載されていないため、ヒトメタニューモウイルスに感染しても登校はできます。が、 「咳や発熱などの症状が改善するまでは休んだ方が良いと思います。」
治療
治療は対症療法しかありません。インフルエンザのようにタミフルなどの治療薬はないため、咳や鼻水、解熱剤を使用して治療します。
ヒトメタニューモウイルス感染から細菌性肺炎などに移行するリスクは少なく、気管支炎や肺炎で入院しても、通常抗生物質の使用は必要がないことが多いです。