山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

MKSAP 18 General Internal Medicine Item:8

Item:8

68歳男性が、発熱、陰部の痛み、排尿困難、頻尿、間欠的に痛みが激しくなる症状が、昨日から始まった。

症状は、ルーチンのスクリーニングで PSA が上昇していたために、前立腺の生検を行った後、48時間経過して始まった。

身体所見は、体温38.7℃、血圧は145/82、脈拍は105、呼吸数は正常である。

前立腺は肥大していて、軟らかいそしてやさしくさわると痛みがある。

尿道からは、排膿はなく、陰嚢に圧痛はない。

尿検査では白血球へエステラーゼと亜硝酸が陽性である。

尿グラム染色ではGNRが認められた。尿培の結果は、まだ出ていない。

 

次のうち最も適切な治療は何か

a  アモキシシリン

b セフトリアキソンとドキシサイクリン

c セファレキシン

d ST 合剤

 

正解は D

Key Point

急性細菌性前立腺炎の最も頻度が高い原因は、大腸菌または他のグラム陰性桿菌である。治療は、長期間 ST 合剤またはシプロフロキサシンを使用する。

 

患者の病歴と身体所見から急性細菌性前立腺炎が考えられる。最も適切な治療は ST 合剤の内服である。

リスクファクターは糖尿病、免疫抑制患者、肝硬変患者。その他避妊していない性行為、尿道カテーテル留置、間欠導尿、前立腺生検、前立腺肥大などである。

最も頻度が高い。原因菌は大腸菌または他のグラム陰性桿菌である。

診断は、尿のグラム染色と培養で行われる。

治療は長期間の ST 合剤またはシプロフロキサシンを内服する。

治療期間に関しては十分なエビデンスはないが、6週間の治療が推奨されている。

 

コメント

急性細菌性前立腺炎は、男性の尿路感染症でよく鑑別にあがる疾患ですが、日常診療では、なかなか出会う機会がないなという印象があります。 診断がついた場合には、6週間の抗菌薬治療となるため、ST 合剤やシプロフロキサシンでは、電解質異常やQT延長などの副作用が懸念されますね。

尿道カテーテルが留置されている患者さんや間欠導尿を行っている患者さんでは、感染を起こした時には常に鑑別を考える必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

MKSAP 18 General InternalMedicine Item3

Item3

49歳男性

右膝人工関節置換術前

他に既往歴や薬剤歴なし

身体所見:バイタルサイン正常

右膝は骨肥厚あり、受動運動で摩擦音(crepitus) がある

低分子ヘパリン+間欠的空気圧迫法が入院時から行われている。

 

低分子ヘパリンで肺塞栓やDVT予防はいつまで継続すべきか?

A)10日間

B)14日間

C)35日間

D)完全に動けるようになるまで

E)入院期間中

 

答え:35日間

出血リスクがない整形外科手術を行う患者では、術後は、低分子ヘパリン+間欠的空気圧迫法を入院期間中に行う。低分子ヘパリンは、35日間は継続させる。

 

整形外科領域:人工骨頭置換、膝人工関節置換、頚部骨折はDVTの高リスク

ACCPガイドラインでは、低分子ヘパリン+間欠的空気圧迫法を入院中は推奨

どの抗凝固療法よりも低分子ヘパリンが推奨されている

しかも、14日間よりも35日間継続した方が、VTEのリスクを下げるという、RCT・システマティックレビュー・メタ解析がある。

もし患者が低分子ヘパリンを拒否した場合は、DOACやワーファリンでも代用は可能

出血リスクが高い場合は、間欠的空気圧迫法は行う。

 

1) 入院中は低分子ヘパリンで 10 日間または退院まで予防した股関節・膝関節手術患者おいて、退院後に症候性 VTE 発症したとの報告がある。

2) 股関節骨折患者に術後フォンダパリヌクス(2.5mg)を 1 週間と 3 週間投薬し、VTE および症候性 VTE の発生率は 3 週間群に有意に低率であった。

3) 低分子ヘパリンで術後 7〜14 日間予防した整形外科手術患者において、術後 3-6 週間での症候性 VTE や致死的 PE 発症は稀である。(EV level II)

症候性 VTE は股関節骨折手術後 では中央値 17 日で PE を、24 日で DVT を発症。

VTE の累積リスクは、股関節骨折手術後 の 3 ヵ月間継続した。

VTE 発症例の 70%は退院後に診断された。入院中の血栓予防にも かかわらず、臨床的 VTE の大部分は、退院後に起こる。

 

鼓膜穿孔の場合のマネージメント

f:id:takehiro0405:20190327210749j:plain

鼓膜穿孔
 
耳への殴打、爆竹の破裂、ダイビング、棒やその他の鋭利なものによる
直接的な外傷後に発生
外耳道内の出血、聴力低下、めまい、耳鳴りが生じる。
耳鏡検査では鼓膜の欠損が認められ、耳小骨の破壊を伴うものと伴わないものがある。
 
 
するべきこと
そっと吸引し、外耳道の異物を取り除く
外耳道の擦過傷なのか、鼓膜穿孔があるのかを判別する
聴力と眼振の有無を検索する
鼓膜穿孔があれば、綿の栓を外耳道に入れて、外耳道が乾いた状態にする
穿孔が完全に治るまで、頭を水に入れないようにする
 
治療
吐き気どめ:ナウゼリン
めまい対策:ポララミン
汚染された鼓膜は、オフロキサシン点耳 1日2回 1回2滴 
サンベタゾン点耳 1日2回 1回2滴(浮腫を取るために点耳のステロイドを使用)
耳鼻科に相談しフォローアップする
 

参考文献:マイナーエマージェンシー 原著第3版

MKSAP 18について

f:id:takehiro0405:20190327172921j:plain


〜MKSAP(Medical Knowledge Self-assessment Program)〜

MKSAPとは、米国アメリカ内科学会が3年毎に発行する、自己学習用の内科学テキスト

と問題集です。

1967年に初版が発行されて以来、内科各領域における知識を確認・アップデートするた

めの最良の教材として、世界中で利用されるベストセラーの教科書・問題集です。

 

日々医療は進歩しており、「世界最先端のエビデンスに基づいた医療」を提供するため

には、このような教科書+問題集で効率よく学ぶのは一つの手段だと思います。

研修医の教育材料としても使用しており、毎日少しずつ勉強しています。

 

www.acponline.org

 

特にHospitalist用に青文字になっているところは、比較的解きやすい問題が多く

まずは、青文字の問題を中心に勉強しています。

 

www.acponline.org

 

Doctor's ジレンマ

米国内科学会(American College of Physicians:以下,ACP)は、

世界80か国に約12万人の会員を有する世界最大の内科学会です。

米国のACP年次総会では、毎年、全世界の研修病院から予選を勝ち抜いたチームが

トーナメント形式で参加するクイズ大会「Doctor's Dilemma」が開催されている。

日本でも、毎年京都で開催され、全国の研修病院からレジデントが出場するクイズ大会

で、優勝・準優勝者のうち3名が、アメリカで行われる本戦に参加できる。

長崎の五島列島から、いつの日か日本代表としてアメリカの本戦に出場できる日を夢見

て、研修教育に励んでいます。

ピロリ菌3次除菌は、経験的治療でも良い??

こんな論文が出ていました。

ピロリ3次除菌は、千葉の病院の時から経験的なレジメンで治療をしていたんですが、

治療成功率は、20人くらいやって、なんと100%!!

 

五島でも2次除菌まで不成功の患者さんが結構いたので、患者さんが自由診療で治療を希望され、5人治療しましたが、なんと1人失敗しました。

過去の成績と合わせると、成功率は96%くらいです。

 

下の論文からも、経験的治療でもまあ良いのではないかと思いましたね〜

感受性試験とあまり変わらないので、費用対効果としても経験的治療が良さそうです。

 

Efficacies of Genotypic Resistance-Guided vs Empirical Therapy for Refractory Helicobacter pylori Infection

 

Gastroenterology 2018;155:1109–1119

 

ピロリ菌の2次除菌まで失敗した患者に対して、遺伝子検査で抗生剤感受性の試験をして治療する、いわゆるガイドラインで推奨されている治療と経験的に3次除菌で効果があるとされているレジメンを抗生剤感受性検査をせずに治療する群との比較試験

 

Methods

デザイン:RCT

Allocation:Concealed

Blinding:Blinded

Follow up:治療後6週間以上

Setting:台湾の9つの病院

患者:ピロリ菌の2次除菌まで失敗した410人(20歳以上 平均54歳 68%女性)

除外基準:胃癌、重症患者、薬剤アレルギー、胃切除後など

Intervention:

Genotypic Resistance-Guided群、 Empirical Therapy群の

各々205人ずつ割り当て

 

両軍ともに、ネキシウム40mg+アモキシシリン1gを7日間内服

その後、8-14日は、ネキシウム40mg+メトロニダゾール500mg

この2剤に加えて、

レボフロキサシン250mg

クラリスロマイシン500mg

テトラサイクリン500mgのいずれかを組み合わせた治療をした。

 

Genotypic Resistance-Guided群:ピロリの感受性試験の結果に基づいて

Empirical Therapy群:以前の抗生剤使用を加味して主治医が判断

 

Outcome:呼気試験での除菌成功率

Follow up:91%

 

結果

f:id:takehiro0405:20190326111330p:plain

除菌の結果

78%と72%で、数値的には変わらなそうですね〜〜

 

f:id:takehiro0405:20190326111506p:plain

薬剤耐性の結果

クラリスロマイシンは耐性92.5% メトロニダゾールも87.7%と非常に高いです。

やはり耐性化が除菌不成功の原因ですね。

 

Limitation:両群の違いを12%と見積もりN数を設定しているので、もう少し違いの差を小さくすると有意差は出るかもしれないですが、まあそれでも対費用効果を考えると、経験的治療でも良いと思います。

 

日本では、タケキャブを使用することが多く、成功率はもう少し高い印象があります。

診療所の脇にある花壇を

診療所の脇にある花壇は、毎年、春〜夏の間は、ゴーヤを植えて日よけ&ゴーヤを収穫する、まさに一石二鳥の植物を植えています。

 

冬の間は、キャベツ、白菜、ブロッコリーを植えて、今日はキャベツの収穫でした。

f:id:takehiro0405:20190324175750j:plain

収穫前のキャベツ

完全無農薬で、よく育ったな〜〜〜、一時は虫に食べられ諦めていましたが、なんとか復活しました。

 

f:id:takehiro0405:20190324175819j:plain

ゴーヤ、鷹の爪、キュウリを植えました

春になったので、ゴーヤ、鷹の爪、キュウリを植えてみました。

うまく育つかな〜〜楽しみです。

 

ナニコレ珍百景で放送されました〜〜

実家の茅葺き屋根が投稿されたみたいで、なんと「ナニコレ珍百景」で2019年3月17日にスペシャルで放送されました。

実家の茅葺き屋根をドローンで撮影した様子です。

f:id:takehiro0405:20190323213739j:plain

ドローンからの実家の様子、ポツンと一軒や状態です

f:id:takehiro0405:20190323213743j:plain

 

謎の移住者の正体は?????

f:id:takehiro0405:20190323213746j:plain

山内診療所です。

地域医療をやりながら、農業をやっている医師でした〜〜〜

 

f:id:takehiro0405:20190323213754j:plain

f:id:takehiro0405:20190323213813j:plain

地域医療に貢献し、自給自足を目指してやっています



なぜ、五島列島福江島に住んでいるのでしょうか

 

f:id:takehiro0405:20190323213731j:plain

自給自足の生活をしながら、伝統的な技術を残したいとの思いから五島に移住しました

f:id:takehiro0405:20190323213817j:plain

珍百景に登録されました〜〜