山内診療所 てるてる農場

"長崎県五島列島にある山内診療所”で医師として地域医療に携わりながら、 茅葺屋根の家に住み、牛で田んぼを耕し、ニホンミツバチ・対州馬を飼育して いる。

MKSAP 神経 Item2

75歳男性が尿路感染後の極端な興奮とせん妄の治療のために入院した。

彼は、1年前にレビー小体型認知症と診断されている。彼の妻によると、患者は、週4、5回位夜間に幻視を認めていたが、それに悩まされることはなかった。

内服薬はスタチンと アスピリン である。

身体所見では血圧は150/92、脈拍98 他のバイタルサインは正常である。

患者は興奮していて、見当識障害を認め、幻視がある様子であった。興奮状態は悪化したけれども、攻撃的なことはなかった尿路感染症は適切に治療されている。その他に明らかなせん妄となる原因はなかった。症状に対して環境調整は行っている。

 

この患者の急性の興奮症状の治療として最も有効なものはどれか

アルプラゾラム

ジフェンヒドラミン

・ドネペジル

ハロペリドール

 

 

答え:ドネペジル

point

ハロペリドールレビー小体型認知症では、絶対禁忌である。

ドネペジルがより安全な代替薬で認知症に関連する周辺症状を改善させる可能性がある。

 

 せん妄は、急性の疾患、薬剤の副作用などによって引き起こされる可逆性の症候群である。背景に認知機能低下があるのが、最もリスク因子となっている。

適切な治療を行うと2、3日以内にせん妄が改善する。

・環境調整(カレンダー、時計、家族の写真などを部屋に置いたりする)

・規則正しい睡眠時間(夜間に起こしたり、物音を立てたり電気をつけたりしない)

・朝はカーテンを開け、日中は活動するように促す。

・その他、身体抑制を解除、尿道カテーテルや点滴を早期にやめることが大切である。

 この患者はレビー小体型認知症が背景にあるが尿路感染症を生じており、尿路感染の適切な治療が必要である。しかし症状が改善した後は速やかに尿道カテーテルを中止し、点滴も早期にやめる必要性があると思われる。

 認知症の急性の興奮状態にある際の治療は難しく、 FDA で認可された薬はない。

 定型・非定型抗精神病薬も安全性が担保された薬剤ではない。

ドネペジルもまだしっかりと確立した。治療法はないが、レビー小体型認知症に使うと周辺症状がコントロールされたとの報告。ため今回は、ドネペジルが望ましい治療と思われる。

ベンゾジアゼピンジフェンヒドラミンは、せん妄を悪くするため、適切ではない。