下部消化管内視鏡検査
はじめに
食生活が欧米化し、日本でも大腸癌が増加傾向です。ピロリ菌感染率低下とともに胃がん患者さんは減っていますが、今後は大腸癌が増加してくると思います。
女性のがん死因では大腸癌が第1位であることもあり、女性の患者さんに大腸癌検診を受けるように促していく対策が必要です。
ただし、大腸検査は手技獲得に時間を要し医師により挿入技術に差が出てしまいます。
また穿孔などの偶発症のリスクもあることから、安全で苦痛がない検査ができるように、内視鏡技師は医師とともに、用手圧迫法、大腸内視鏡検査治療の介助法に精通する必要がある。
下部消化管内視鏡検査の適応・禁忌 頻出Point!!
※適応
・患者の希望がある
・便潜血検査陽性
・注腸検査で異常を指摘された
・腹痛や便通異常がある
・血便がある
※禁忌
・患者の同意が得られない
・腹膜刺激症状がある
・中毒性巨大結腸症
下部消化管内視鏡検査の注意点
・検査前の問診で前回の記録なども参考に挿入困難例や苦痛が強かったなどの情報収集が必要
・特に腹部手術歴や痩せた女性、憩室が多発している症例などでは挿入困難なことも多い
・大腸カメラが挿入困難な症例は、無理せず注腸検査や大腸CT検査などの選択肢も検討する
大腸内視鏡検査の挿入の基本
・大腸カメラは、腸管の短縮を繰り返しながら挿入するため、大腸ひだを越えてたら引き戻しながら短縮する操作を繰り返す
・送気は最小限にする
・スコープの先端の位置やループの状態を常に念頭におく
・患者の状態を常に観察し、苦痛を訴える場合は、術者に伝える
検査手順
・挿入前に肛門に潤滑剤を塗布し直腸診を行う
・直腸には3つのHouston弁と呼ばれる半月ひだがある。
・S状結腸:連続する半月ひだが特徴、S状結腸は腹腔内で固定されていないため、スコープを押す動作をすると腸管が進展してしまう、ループ形成するなど患者さんに痛みを誘発する可能性がある。可能な限り短縮動作を繰り返し、無理のない挿入を行う。
介助者は、恥骨上や右下腹部などを圧迫して挿入のサポートを適宜行う技術を身につける必要がある。
・下行結腸:洗浄液の貯留が目立つのが部位判断の目安である。
・横行結腸:三角ひだが目印 スコープを半時計回りに回転すると肝彎曲に近づく
・上行結腸:ひだの丈が高いのが上行結腸で横行結腸から挿入する際に患者に腹式呼吸をしてもらうと容易に挿入しやすい
全体の模式図
・大腸内視鏡検査の前処置
大腸検査をするためには腸管内の便を全て排出する必要がある。前処置が不十分だと観察が不十分となり病変を見逃す可能性がある。
イレウスなどの前処置ができない場合を除いて、基本的にしっかり前処置を行う。
前処置の種類は複数あり、患者さんの状態に応じて使い分けるが、最近ではほとんどモビプレップを使用している施設が多いと思われる。
用手圧迫法
・用手圧迫法は、内視鏡技師が身につけるべき技術の一つである。
・内視鏡医と連携が必要
・圧迫しても効果がない場合は、別の場所を探す
・必要な場合のみ圧迫し、通過したら解除する
・患者の苦痛などの表情は見逃さない
特にS状結腸の通過の際に使用することがあり、スコープの先端の位置、たわみの位置をイメージして圧迫する。
・内視鏡検査時の看護記録
内視鏡看護記録は、「看護実践の一連の過程の記録で看護職者の思考と行為を示すもの」とされている。
これは看護の評者や質の向上、医療事故や訴訟の法的根拠ともなる。
次回の看護に継続させるための重要な記録である。
テンプレートなどを使用すると良い
看護記録に記載すべき事項
検査前の看護記録
・問診表から得られる情報と、そこからアセスメントできる内容
・使用された前投薬の量と時間、キシロカインの使用量
・大腸検査の場合は前処置の内容
・抗血栓薬の有無と休薬の状態
・開始時間とバイタルサイン
・陳製薬の種類と使用量 投与時間
・拮抗薬の使用の有無
・検査終了時間
検査後の看護記録
・検査終了時間とバイタルサイン
・食事・水分再開時期
・抗血栓薬の再開時期
・鎮静薬を使用した場合は覚醒状態 覚醒スコア
・行われた看護行為 今後継続されるべき看護行為
・患者説明内容など
紙カルテでは実施者のサインを行う